2022年チョルノバイフカ攻撃

チョルノバイフカ攻撃：ロシア軍の苦難の地

2022年、ロシアのウクライナ侵攻における南部攻勢において、チョルノバイフカは特異な戦場となった。ヘルソン近郊に位置するこの町は、ヘルソン国際空港があるため、ロシア軍にとって重要な拠点であった。しかし、この地は、ウクライナ軍による執拗な攻撃の舞台となり、ロシア軍は甚大な損害を被ることとなった。

戦略的背景

チョルノバイフカは、ヘルソン市への玄関口として戦略的に重要な位置を占めていた。空港の存在は、ロシア軍にとって兵站上の要であった。しかし、ウクライナのアナリスト、アレクサンダー・レメノフが指摘するように、この地はロシア軍の主要な軍事目標の一つとなった。

2022年2月24日、ロシア軍は侵攻初日に、チョルノバイフカを含むウクライナの6つの空港を爆撃し、占拠を試みた。しかし、これが、後の泥沼の戦いの始まりであった。

繰り返される攻撃

初期の攻撃

2月27日、ロシア軍が空港を制圧したが、同日、ウクライナ軍はトルコ製UCAV「バイラクタルTB2」で反撃を開始。この攻撃は、ロシア軍がシリアでトルコ兵を殺害した事件から2周年の日であったため、トルコ大使館はこれを「復讐」と表現した。その後も、3月2日、7日、15日、16日と、ウクライナ軍による攻撃は続き、ロシア軍の装備と人員に大きな損害を与えた。

将軍の死と戦況の変化

3月18日には、ウクライナ軍が第8親衛諸兵科連合軍の司令官、アンドレイ・モルドヴィチェフ中将を殺害したと報じられた（後に生存が確認された）。その後も、3月19日、21日、22日、23日、24日と攻撃は続き、ウクライナ軍はロシア軍を追い詰めていった。特に3月24日には、第49諸兵科連合軍の司令官、ヤコフ・レザンツェフ中将が戦死したと報じられた。

春から夏にかけて

3月27日から5月29日にかけて、ウクライナ軍の攻撃はさらに激化し、3月27日、28日、4月1日、14日、17日、24日、5月2日、13日、15日、16日、29日と、継続的にロシア軍の陣地を攻撃した。これらの攻撃は、ロシア軍の弾薬庫、装備、人員に大きな損害を与えた。7月1日以降、攻撃は再開され、7月1日、3日、7日、9日、13日、21日、22日、27日、28日、29日、30日、8月2日、3日、5日、20日、22日、26日と、ロシア軍の基地、弾薬庫が破壊された。特に7月9日の攻撃では、多数のロシア軍将校が死亡した。

ヘルソン反攻と解放

8月29日、ウクライナ軍はヘルソンとその周辺地域を解放するための反攻を開始。チョルノバイフカもその対象となり、8月30日、31日、9月5日、7日、18日、20日、22日、10月25日と、各地で爆発が報告された。10月27日には、ロシア軍が空港から装備を撤退させ、空港は空になった。11月3日には、ウクライナ軍が撤退中のロシア軍を攻撃し、11月5日には、新たな爆発が報告された。11月9日、ロシア軍はドニエプル川右岸からの撤退を発表し、11月11日にはウクライナ軍がチョルノバイフカを解放した。

戦いの影響

象徴的な戦場

チョルノバイフカは、ロシア軍の弱点を露呈した象徴的な場所となった。ウクライナのソーシャルメディアでは、ロシア軍の損失を嘲笑するミームが拡散し、ウクライナ社会で広く知られるようになった。この場所は「伝説」とまで言われるようになり、ウクライナのバンドがこの出来事をテーマにした曲を制作し、チェルニーヒウ市では通り名がチョルノバイフカ通りに改名されるなど、大きな影響を与えた。

戦争の教訓

ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーは、チョルノバイフカを「ロシア軍とその指揮官たちが、無能で、自国民を虐殺に追い込むことしかできないありのままの自分達を完全にさらけ出した場所」と述べ、この戦いが歴史に残るだろうと指摘した。

戦争のその後

ドニエプル川右岸が解放された後も、ロシア軍はチョルノバイフカへの砲撃を継続した。11月26日には、砲撃により10歳の少年が負傷する事件も発生した。この出来事は、紛争の終結がまだ遠いことを示唆している。

チョルノバイフカの戦いは、ウクライナ戦争において、一つの地域がいかにして戦略的、象徴的に重要な場所になり得るのかを示す好例である。また、ウクライナ軍の抵抗とロシア軍の弱点を浮き彫りにした戦いとして、歴史に刻まれることだろう。

もう一度検索