2024年末のラグビーユニオン国際試合

2024年末 ラグビー国際試合概説

2024年末、世界のラグビーシーンは例年通り、特に11月を中心に国際試合の熱気に包まれました。北半球にとっては秋の到来を告げるこの期間の試合は、各国の実力を測る重要な機会となります。中でも、シックスネーションズに参加する主要6カ国がホストとなる21試合は、「オータム・ネーションズ・シリーズ2024」として特別な位置づけがなされました。前年の2023年はラグビーワールドカップが開催されたため、この時期に大規模な国際試合は行われておらず、2年ぶりのシリーズ開催となりました。

遠征と注目の対戦

この期間、多くのナショナルチームが他国への遠征を実施しました。特筆すべきは、オーストラリア代表がイギリスおよびアイルランドの4カ国と対戦する「グランドスラム・ツアー」を敢行したことです。イングランドとの対戦では、2年ぶりに「エラ＝モブス・トロフィー」を巡る戦いが繰り広げられました。また、隣国であるケニアとウガンダは、2004年から続く伝統の「Elgon Cup」をホーム＆アウェイ方式で戦いました。

しかし、全てのチームが予定通り遠征できたわけではありません。2024年7月、サモアラグビー協会は財政的な困難、特にスポンサー不足を主な理由として、11月の国際試合期間中に代表チームの遠征を行わないことをワールドラグビーに通知しました。これはシリーズ全体にとって残念な出来事となりました。

オータム・ネーションズ・シリーズとそのハイライト

オータム・ネーションズ・シリーズは、イングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズ、フランス、イタリアといったシックスネーションズ加盟国がホストを務め、南半球やその他の地域のチームを迎えて行われます。このシリーズでは、ファンの投票によってMVPが決定され、2024年はアイルランド代表のフランカー、ジョシュ・バンダーフリアーが栄冠に輝きました。彼は得票率37%を獲得し、南アフリカ代表のチェスリン・コルビ（34%）を抑えての受賞でした。

試験的ルールの導入

このシリーズの大きな特徴として、いくつかの試験的な新ルールが導入された点が挙げられます。特に注目されたのは、「20分レッドカード」の採用です。これは、レフリーがその場で危険なプレーと判断しレッドカードを提示した場合でも、反則を犯した選手はフィールドに戻れないものの、20分経過後に別の選手と交代して元の人数でプレーを続けられるというものです。ただし、意図的で非常に危険なプレーに対して提示される「完全なるレッドカード（フルレッドカード）」の場合は、従来のルールと同様に交代選手を出すことはできません。このルールは、試合時間の長い中断や、一方のチームが長時間人数不利になる状況を緩和することを目的としていますが、フランス連盟が反対、アイルランド協会が併用には賛成だが恒久化には反対するなど、導入に対する意見は分かれています。また、スクラム、ラインアウト、ゴールキックの開始までの時間を示す「カウントダウンクロック」も試行されました。これらの試験ルールは、シックス・ネーションズ・ラグビーが主催するオータム・ネーションズ・シリーズだけでなく、ワールドラグビー主催の同時期の他の国際試合にも適用されました。ウェールズ対フィジー戦では、フィジーのセミ・ランドランドラがテストマッチ史上初めて20分レッドカードを提示された選手となりました。

各国の戦績と新たな記録

シリーズ期間中、いくつかの歴史的な記録が生まれました。ウェールズ代表は特に苦戦し、テストマッチの連敗記録を「12」に更新。1937年以来87年ぶりに、暦年を通して勝利を挙げられないという厳しい結果となりました。一方、スコットランド代表は好調で、年間テストマッチ勝利数を「9」とし、自国にとって過去最多記録を樹立しました。また、フィジー戦では40点差、チリはカナダ戦で30点差と、過去最大得点差での勝利を記録した試合もありました。オーストラリア代表は、トゥイッケナム・スタジアムで9年ぶりに勝利を収め、「エラ＝モブス・トロフィー」を12年ぶりに奪還しました。

選手個人でも記録達成が相次ぎました。アイルランド代表のキアン・ヒーリーは、ブライアン・オドリスコル氏が持つアイルランド代表最多キャップ記録（133）に並び、その後さらに更新して単独最多となりました。スコットランド代表のドゥーハン・ファン・デル・メルヴァは、テストマッチ通算30トライを達成し、自国の歴代最多トライ記録を塗り替えました。他にも、フランスのグレゴリー・アルドリットやニュージーランドのパトリック・トゥイプロトゥ、オーストラリアのサム・ケレビ、ロブ・ヴァレティニらがテストマッチ50キャップを達成しています。初対戦となる試合もいくつか行われ、アラブ首長国連邦対ドイツ、オランダ対チリなどが歴史に名を刻みました。アメリカ合衆国がトンガに勝利したのは25年ぶり、フランスがニュージーランドに3連勝したのは1994-95年以来でした。

日本代表の活動

ラグビー日本代表もこの秋、精力的に活動を行いました。「リポビタンDチャレンジカップ2024」と銘打たれた国内でのテストマッチ、そして海外での「リポビタンDツアー2024」を実施しました。ウルグアイとの試合はオータム・ネーションズ・シリーズに含まれませんでしたが、注目の一戦となりました。

放送・配信

日本国内では、WOWOWがオータム・ネーションズ・シリーズの主要試合を放送・配信し、シリーズ全試合を配信しました。オータム・ネーションズ・シリーズ外の試合については、J SPORTSなどが中継を行いました。

2024年末のラグビー国際試合期間は、新ルールの試行、歴史的な記録の更新、そして各国の明暗が分かれるなど、見どころの多いシリーズとなりました。

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