23型フリゲート

イギリス海軍23型フリゲート（デューク級）：多用途フリゲートの傑作

イギリス海軍の23型フリゲート、通称デューク級は、1990年から2000年にかけて16隻が建造された多用途フリゲートです。艦名はいずれも公爵家に由来しています。比較的安価でありながら高い戦闘能力を備え、イギリス海軍の主力艦として長年にわたり活躍しています。現在も12隻が現役で運用されており、その高いコストパフォーマンスは高く評価されています。

開発の経緯：廉価と汎用性の追求

1970年代、イギリス海軍は高コストな22型フリゲートの後継艦として、より経済的なフリゲートの開発に着手しました。当初は簡素な装備で曳航ソナーを運用できる小型艦を想定していましたが、1981年の防衛見直しを経て、輸出も視野に入れた多用途フリゲートへと設計が変更されました。レーダー反射断面積の低減やモジュール化設計が重視され、フォークランド紛争の戦訓も設計に反映されています。ヤーロウ社が設計契約を受注し、1番艦は1984年に発注されました。

設計：静粛性とステルス性を重視

船体は平甲板型で、安価な鋼材を使用しながらも高い強度を実現しています。全長133メートルに及ぶ船体には、レーダー反射断面積を低減するための傾斜や電波吸収塗料が施され、ステルス性能の向上に配慮されています。また、フィンスタビライザーやタートルバックなどの減揺装置も装備し、航行安定性の向上にも努めています。

電気推進システム：静粛性と効率性の両立

23型フリゲートの大きな特徴として、電気推進システムの採用が挙げられます。巡航時にはディーゼル・エレクトリック方式、高速時にはガスタービンエンジンを追加するCODLAG方式を採用することで、広い速度域での効率的な航行を実現しています。ディーゼルエンジンは防振支持された上で上甲板上に配置され、水中放射雑音を大幅に削減することに成功。その静粛性から「世界で最も静粛な水上戦闘艦」と評されています。

装備：多様なセンサーと武器システム

C4ISRシステム：情報収集と処理の中枢

当初は集中型のCACSシステムの搭載が予定されていましたが、開発難航により、就役初期の艦艇には搭載されませんでした。その後、分散型のSSCSシステムが開発され、後付けで搭載されています。レーダーは、当初搭載された996型レーダーに代わり、997型レーダーへの換装が進められています。ソナーは、曳航ソナーと船体装備ソナーを組み合わせた構成で、対潜能力を強化しています。電子戦支援システムも性能向上のため更新が行われています。

武器システム：多様な脅威への対応

フォークランド紛争の戦訓を踏まえ、個艦防空ミサイル・システムであるシーウルフ（GWS.26）を搭載。垂直発射方式を採用することで、搭載弾数の減少を補う即応性の向上を実現しています。また、ハープーン艦対艦ミサイル、55口径114mm単装砲、30mm機銃などを搭載し、多様な脅威に対応できる能力を備えています。対潜兵器としては、哨戒ヘリコプターと短魚雷発射管が装備されています。

運用と発展：多くの姉妹艦と近代化改修

16隻という多数の同型艦が建造されたことは、その設計の成功を示しています。22型フリゲートに比べコストパフォーマンスに優れ、イギリス海軍の主力艦として長期間にわたって活躍してきました。近年は、センサーや武器システムの近代化改修が進められ、高い戦闘能力を維持しています。

映画『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』への登場

23型フリゲートは、映画『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』にも登場しています。架空の艦艇「チェスター」、「デボンシャー」、「ベッドフォード」として描かれ、劇中で重要な役割を果たしています。撮影には実在の「ウエストミンスター」が使用されました。

まとめ

23型フリゲートは、コストパフォーマンス、静粛性、ステルス性、多用途性を兼ね備えた優れたフリゲートです。長期間にわたる運用実績と近代化改修によって、今後もイギリス海軍の戦力として重要な役割を担うことが期待されます。

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