艦対艦ミサイル

艦対艦ミサイルの概要

艦対艦ミサイル（SSM）は、艦船から発射される対艦用のミサイルであり、現代の海戦において重要な兵器たる存在です。その起源は、第二次世界大戦の空対艦ミサイル（ASM）にまで遡ります。この時期、ドイツ空軍やアメリカ海軍は、空対艦ミサイルの実用化に向けて開発に取り組んでいました。

ソビエト連邦は、艦上発射を想定した対艦ミサイルの開発で先行し、1959年には短射程のP-15（SS-N-2）をミサイル艇に搭載し配備を開始しました。1960年には、250海里（およそ460 km）の射程を持つP-6（SS-N-3）が登場し、アメリカ海軍の空母艦隊に対抗するために潜水艦やミサイル巡洋艦に装備されました。その後、1967年には、エジプト海軍のミサイル艇がイスラエル海軍の駆逐艦を撃沈するなど、艦対艦ミサイルの脅威が顕在化しました。

アメリカ海軍は、艦対艦ミサイルの導入にあたって、艦対空ミサイル（SAM）を使って対艦兵器の役割を果たす方針を取っていました。加えて、大戦中に建造された砲装型巡洋艦が多く存在していたため、当初は艦上発射型の巡航ミサイルを対地用の戦略兵器として使用していました。しかし、北欧諸国やイスラエルでは、早くから艦対艦ミサイルの導入を進め、1966年のスウェーデンによるRB 08の配備や1972年のイスラエルによるガブリエル、ノルウェーによるペンギンの搭載が見られました。

1973年の第四次中東戦争では、イスラエルとシリアのミサイル艇同士の戦闘が展開され、海戦におけるミサイルの重要性が再認識されるきっかけとなりました。その後、艦対艦ミサイルはハープーンなどのASMとも共通化し、艦上発射が主流となっていきました。

初期の艦対艦ミサイルは、速度が速く、探知を避けるための工夫が施されていましたが、水上艦もミサイルの脅威に対抗する手段として、電子攻撃技術や近接防御システム（CIWS）の開発を進めました。この結果、ミサイル側でもシースキミング（超低空飛行）やレーダー反射断面積（RCS）の低減といった対抗策が講じられるようになりました。

艦対艦ミサイルは、敵艦を遠距離から攻撃することができますが、水上艦自身が発射プラットフォームとなるため、目標の探知・捕捉には限界があります。このため、初期の艦対艦ミサイル同士の交戦は、短距離で行われることが多かったです。例えば、エグゾセSSMの初期モデルは、小型艦艇のレーダー探知能力に合わせた射程設計となっていたことも一因です。

また、ソビエト連邦は、遠距離攻撃を狙い、航空機や衛星による情報収集システムを構築するなど、艦対艦ミサイルの戦術を進化させていきました。一方で、NATO諸国もSSMの射程延伸や、艦載ヘリコプターによる目標捕捉体制の整備を図るなど、ミサイル戦の発展が続いています。

このように、艦対艦ミサイルは、その登場から現代に至るまで、海戦において重要な役割を果たしてきました。今後も新たな技術の導入や戦術の進化が期待されます。

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