2S9ノーナ-S 120mm自走砲

2S9ノーナ-S 120mm自走砲

2S9ノーナ-S（2С9 "НОНА-С"）は、ソビエト連邦が開発した空挺部隊向け自走砲です。この砲は、ASU-85に代替する目的で設計され、BTR-Dの車体を基にしています。特に注目すべきは、この車両がパラシュートにより空中投下可能である点です。

「ノーナ」という名称は「地上砲兵向け新型砲」を意味するロシア語の頭文字を取ったもので、また音楽用語の九の和音から由来し、制式番号「2С9」の“9”と関連づけられています。

概要

2S9は、主に空中から空挺部隊に火力を支援するための装甲車両です。このタイプの装甲車両はソビエト空挺軍によって特に重視されており、BMD-1空挺戦闘車の派生モデルとして開発されました。そのため、空挺部隊や海軍の歩兵部隊にも広く採用されており、12322型エアクッション小型揚陸艦（一部ではズーブルとも呼ばれる）には2輌まで積み込むことができます。

この車両は1981年に正式に採用されましたが、実際には1979年からアフガニスタンで戦闘に投入されています。また、西側諸国には1985年のモスクワ革命記念パレードで初めて公開されたと言われています。現在、この環境下で使用されているのはロシア連邦軍だけです。

構造

2S9は、BMD-1の車体に、後装式120mm直射・迫撃両用砲の2A60を装備した砲塔を持っています。この砲は、曲射と直射の両方が可能で、自動装填装置を備えており、発射速度は毎分7発に達します。しかし、自動装填のために砲塔の旋回範囲は左右各35度に制限されており、全方向に向けることはできません。

空中投下用の特別な車台に搭載されている点も特筆すべきです。この車台は着地直前にロケットブースターが点火され、着地時の衝撃を吸収しますが、実際の戦闘では空中投下された例は存在しません。さらに懸架装置を最大短縮状態で固定する機能があり、浮水性能も持つため、特別な装備がなくとも浮上して航行できます。

使用可能な弾薬

2S9が使用する2A60 120mm直射・迫撃両用砲には、多様な砲弾が搭載可能です。以下はその一部です：

• - 破片榴弾『3VOF49 ペレダーチク』：初速367m/s、射程8.7km、最小射程1.7km。
• - ロケット推進破片榴弾『ペレプリョーチク』：固体ロケットモータを搭載し、射程は12.8km。
• - レーザー誘導砲弾『キトロフ-2』：射程9km、精度はCEP 0.8～0.9。
• - 対戦車榴弾『ポーツトゥプ-2』：初速560m/s、射程1000mで600mmまでの装甲を貫通。
• - 破片地雷：射程7.1kmで、最小射程400m。
• - その他、照明弾、煙幕弾、焼夷弾なども使用される。

派生型

2S9の改良型には、以下のようなモデルがあります：

• - 2S9-1『スヴィリステルカ』：アフガニスタンの戦経験を基に、搭載する砲弾数を40発に増加させた改良型。
• - 2B16『ノーナ-K』：空挺軍だけでなく陸軍でも採用される牽引砲。
• - 2S23『ノーナ-SVK』：BTR-80装甲兵員輸送車に120mm砲塔を搭載したモデル。
• - 2S31『ヴェーナ』：BMP-3に長砲身の砲塔を装備したモデル。
• - 2S34 ホスタ：2A80を装備した自走迫撃砲。

運用国

現在、キルギスやモルドバなどで2S9が運用されています。2023年の時点で、キルギス陸軍は12両、モルドバ陸軍は9両の2S9を保有しています。

まとめ

2S9ノーナ-Sは、ソビエト連邦の技術の結晶を凝縮した自走砲として、現代の戦場において有用な火力支援が期待されており、その多様な機能と構造により、今なお多くの国の軍事運用に寄与しています。

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