BMD-1

概要

BMD-1（БМД-1）は、ソ連の空挺部隊専用に作られた歩兵戦闘車両で、空中投下が可能な特殊な設計が特徴です。この車両の名前はロシア語の「Боевая машина десанта」に由来し、「空挺戦闘車」を意味します。BMD-1は、1960年代の冷戦時代、特に1962年のキューバ危機を受けて開発が進められました。ソ連の空挺軍は、従来の装備では十分に対抗できない状況にあり、迅速な展開が求められたためです。

開発の背景

冷戦期の緊迫した国際情勢の中、ソビエト連邦は自国の空挺軍を強化する必要がありました。従来の自走砲車両は空挺部隊の即応性には不向きで、使命を果たせないことが多かったため、1965年には専用の装甲車両の設計が始まりました。1968年に試作車両が完成し、翌年にはBMD-1として制式化され、正式に採用されました。

設計詳細

BMD-1は、同時期に開発されたBMP-1の設計に基づいていますが、サイズが縮小され、軽量化がなされています。車体は軽量なアルミ合金製で、ある程度の装甲保護を提供しますが、特に横側や後部の装甲は脆弱です。前方部分には鋭角的な傾斜があり、避弾経始に優れています。水面を走行する能力も持ち、前方には波除けがついています。

操縦席は前方にあり、操縦手は3つのペリスコープから前方視界を得られます。運転席には車長が座り、観察用のペリスコープも装備されています。夜間でもアクティブナイトビジョンを利用することで敵を視認できるため、様々な視覚的障害を克服できるようになっています。

武装と戦闘機能

BMD-1の戦闘室には、73mm低圧滑腔砲である2A28が搭載されており、主に対戦車戦闘に使用されます。また、対[[戦車ミサイル]]の9M14 「マリュートカ」も発射可能ですが、これは後により強力な9M113「コンクールス」に変更されました。BMD-1Pとして改良されたバージョンでは、この新しいミサイルを装備しています。加えて、7.62mmのPKT機関銃も搭載され、車両の防御能力をさらに高めています。

運用と現状

実戦では、743部隊がアフガニスタン戦争でBMD-1を使用しましたが、その運用における課題も見つかりました。主砲の威力不足や、乗員の狭さが頻繁に問題視され、これに基づいて改良型のBMD-2が開発されました。現在でもロシア空挺軍やその他の国々で使用されていますが、旧ソ連の国々での運用が多いため、新しい技術を持つ装甲車両とは競争が難しい状況です。

派生型と国際的運用

BMD-1には様々な派生型があり、指揮車型や観測車型、修理回収車、装甲兵員輸送車などが存在します。例えば、BMD-1Kは指揮車型で無線機を増設しています。また、インド陸軍など、いくつかの国でもこの車両が装備されていますが、複数の国で使用されている兵器の中で退役するものもあります。特にイラクは、湾岸戦争及びイラク戦争において多くのBMD-1を失いましたが、現在ではほぼ退役しているとされています。

このように、BMD-1は明確に時代背景を反映した重要な軍事装備であり、空挺軍がその戦力を強化する際の大きな一翼を担ってきました。装備の変更や新設計の導入が進む中で、BMD-1も次世代の空挺装備へとその姿を変えていくでしょう。

もう一度検索