3つのピアノ曲 (シューベルト)

『3つのピアノ曲』D946

フランツ・シューベルトのピアノ独奏曲『3つのピアノ曲』D946は、彼が亡くなるおよそ半年前にあたる1828年5月に生み出されました。この作品は、音源や楽譜によっては『3つの小品』、あるいは『3つの即興曲』という名称で紹介されることもあります。

概要

この曲集は、シューベルトの死後長い間人々の記憶から忘れ去られていました。しかし、後に作曲家ヨハネス・ブラームスがその音楽的価値を見出し、匿名の編集者として手を加えた上で、『3つのピアノ曲（Drei Klavierstücke）』という標題を付して世に送り出しました。これは作曲者の死後40年を経た1868年のことです。

本作品は、シューベルトが1827年に作曲した二組の『4つの即興曲』（D899およびD935）に続く、彼の即興曲形式による第三の曲集として作曲されたと一般には考えられています。しかし、楽譜の形態を見ると、第1曲と第2曲が一つの紙に、そして第3曲が別の紙に記されており、これらの作品がシューベルト自身によって一つのまとまりとして構想されたものなのか、それとも後世の編集者であるブラームスの手によって一つにまとめられたものなのかは、未だ明らかになっていません。

形式的には複合三部形式やロンド形式が多く見られますが、ブラームスは作曲者自身が冗長と感じて削除を意図した可能性がある箇所も含め、楽譜に忠実に印刷・出版しています。

構成

全3曲を通しての演奏時間は、およそ30分程度です。

第1曲 変ホ短調
Allegro assaiと指定されたこの曲は、4分の2拍子で書かれており、三部形式に基づいています。冒頭の主題は情熱的なタランテラのリズムを思わせるため、8分の6拍子としても解釈されることがあります。反復時には単調さを避けるため、同主調である変ホ長調へと転調する工夫が見られます。中間部にはAndante、2分の2拍子によるロ長調の部分が挿入されており、華やかな音階が印象的です。なお、この第1曲は当初ロンド形式で構想されており、変イ長調の長三度和音を用いた詠嘆的なエピソードが含まれていましたが、後に作曲者自身の手により削除されています。

第2曲 変ホ長調
Allegretto、8分の6拍子によるロンド形式の楽曲です。ロンド主題には、シューベルト自身の歌劇「フィエラブラス」からの引用が用いられており、抒情的で落ち着いた雰囲気をたたえています。この主題に挟まれる二つのエピソードのうち、一つはハ短調（時にハ長調も交じる）による激しい感情表現、もう一つは2分の2拍子による変イ短調の清澄な調べから構成されています。

* 第3曲 ハ長調
Allegroの指定、4分の2拍子の三部形式です。シンコペーションのリズムが特徴的な、素朴でありながら活発な主題が中心となります。中間部は変ニ長調、2分の3拍子で書かれており、対照的な穏やかさを持っています。

世界初録音

この曲集の世界初録音は、著名なピアニスト、ヴァルター・ギーゼキングによる演奏です。これは1956年に記録されましたが、同年ギーゼキングは惜しくもこの世を去っています。

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