3番テーブルの客

深夜ドラマ「3番テーブルの客」

1996年から1997年にフジテレビで放送された深夜ドラマ「3番テーブルの客」は、脚本家・三谷幸喜が書き下ろした脚本を、毎回異なる監督とキャストで制作するという実験的な試みがなされた作品です。

作品概要

このドラマの特徴は、冒頭のナレーション「台本が同じなら同じ作品が出来上がると思うならあなたはドラマを知らない」が示すように、演出によって作品の雰囲気が大きく変わる点にあります。毎回同じ筋書きでありながら、キャスティング、小道具、カメラワークなど、演出家の個性によって全く異なる作品として楽しめる点が魅力です。演出家を目指す人にとっては、演出の多様性を学ぶ上で非常に参考になる作品と言えるでしょう。1997年には日本民間放送連盟賞優秀賞を受賞しており、その質の高さが評価されています。

第1話は三谷作品を多く手がける河野圭太が担当。その後、『世にも奇妙な物語』の星護、『マルサの女』の伊丹十三、とんねるずの木梨憲武など、多彩な顔ぶれが演出を担当しました。また、1997年1月4日にはスペシャル番組『3番テーブルのもう1人の客』も放送され、こちらは杉田成道が監督を務めました。現在、第1話は横浜市にある放送ライブラリーで視聴可能なほか、フジテレビオンデマンドで有料配信されています（ただし、第4回は配信されていません）。

制作裏話

当初は『ディレクターズ』というタイトルで、マンションの一室を舞台にした3人の会話劇という設定が予定されていました。演出予定の監督は26名とされており、河毛俊作、永山耕三といった監督も候補に挙がっていましたが、実際には参加していません。また、最終回は三谷幸喜自身が演出する予定でしたが、こちらも実現しませんでした。放送前には『監督とは?』という番組が2回にわたって放送されましたが、これは三谷の脚本の遅れによる措置であったと言われています。制作スケジュールは非常にタイトで、第1話の河野圭太には撮影開始の1週間前にオファーがあったことが明かされています。

三谷幸喜は、杉田成道が演出した回について不満を抱いていたようで、後にエッセイで言及しており、それ以降、両者は仕事をしていないそうです。また、番組終了後、ホイチョイ・プロダクションが映画雑誌のコラムでこの番組を取り上げ、映画監督はテレビ演出家よりもシナリオを改変しすぎているという結論を出しています。

あらすじ

物語は、かつて売れない歌手だった男が、夢を諦めて劇場の近くの喫茶店で働いているところから始まります。彼は未だに夢を諦めきれず、劇場の演目を気にしています。ある日、店に一人の女性客がやってきます。3番テーブルに案内されたその女性を見て、男は驚きます。彼女は、かつて売れない時代にデュエットパートナーとして男を支えていた妻だったのです。

久しぶりの再会に、二人はぎこちない会話を交わします。男は、自分が劇場でコンサートに出演するバンドマスターだと見栄を張りますが、そこへバンドのメンバーが現れ、男は嘘を重ねてしまいます。女は男の嘘に気づきながらも、彼のプライドを傷つけないよう、嘘に付き合います。

さらに、劇場に出演する歌手のアンドリュー堺が現れたことで、男の嘘はさらに深刻になります。しかし、女はこっそり堺にメモを渡し、男がバンドマスターであるかのように振る舞ってもらいます。最後に、男がバンドマスターではないことが明らかになりますが、女は男のプライドを尊重し、彼の嘘を最後まで受け入れます。実は、女性は「ビビ萩原」という歌手で、劇場でライブを行う予定でした。

スタッフ

企画: 石原隆、小川泰
プロデュース: 小岩井宏悦
脚本: 三谷幸喜
構成: 渡邊健一
ナレーション: 川端健嗣
制作: フジテレビ

主題歌

TIMESLIP-RENDEZVOUS: 「四丁目カフェで会いましょう」

関連文献

中江功「“3番テーブルの客”の演出」月刊シナリオ教室 24(10), 1997-09
中町綾子「「3番テーブルの客」における脚本と演出の関係について」日本大学芸術学部紀要 (27) 85-100, 1997
戸崎春雄「「3番テーブルの客」を巡る演出考」東京工芸大学芸術学部紀要 4 25-32, 1998
橋本慎吾「パラ言語情報の音声的特徴抽出に関する一考察 : 異なる演者が発する「俺は遊びじゃ歌わない」の定量分析(紀要編)」岐阜大学留学生センター紀要 2004 3-9, 2005-03

外部リンク

3番テーブルの客：フジテレビオンデマンド

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