5・17非常戒厳令拡大措置

5･17非常戒厳令拡大措置

1980年5月17日に実施された大韓民国の非常戒厳令拡大措置は、前年の朴正煕大統領の暗殺に伴い一時的に政治的自由が回復した後、再び強圧的な軍事政権への移行を促進した重要な出来事です。この措置は、軍内の秘密組織「ハナフェ」を中心とする新軍部による政権掌握の試みとして位置付けられています。

背景

1979年10月26日、朴正煕大統領が暗殺され、緊急措置が撤廃されました。この結果、政治的自由が一時的に回復し、「ソウルの春」という名の下で学生や労働者による民主化運動が活発化しました。特に、1980年の3月から5月にかけて、全国で約2,300回にも及ぶ学生デモが展開され、約35万人がこれに参加しました。デモの中でも、5月15日に行われたソウル駅での大規模な集会が特に注目されました。

しかし、同時期には労働者のストライキや労働争議も相次ぎ、社会的な不安が高まっていました。特に4月21日に発生した舎北事態では、炭鉱夫たちが四日間にわたり地区を占拠し、緊張を高めました。

戒厳令の導入

こうした状況の中で、軍部は5月17日の正午に全軍主要指揮官会議を招集し、実権を握る新軍部の中心人物である全斗煥陸軍中将の指導のもと、国会解散と非常戒厳令の全国拡大を決定しました。この決定を受け、同日午後5時に崔圭夏大統領が戒厳令布告令第10号を発表し、18日午前零時をもって戒厳令が全土に拡大されました。

戒厳令の主な内容には、すべての政治活動の禁止、屋内外での集会やデモの禁止、言論の事前検閲、大学の無期限休校、ストライキの禁止が含まれていました。

影響と結果

戒厳令の全国拡大に伴い、戒厳司令部は軍を動員し、国会を武力で掌握しました。政治家26名が逮捕され、金泳三を自宅軟禁するなどの強硬な措置が取られました。これらの措置は、憲法を無視した超法的行為とされ、国民の間に強い反発を招きました。

特に、光州市では戒厳令に対する学生の抗議活動が激化し、戒厳軍との衝突へと発展しました。この抗議運動は後に「光州民主化運動」と呼ばれる重要な歴史的事件の発端となり、多くの犠牲者を出しました。このように、5･17非常戒厳令拡大措置は大韓民国の政治史において再び軍政に逆戻りするきっかけを作りました。

今振り返ると、5･17の出来事は、国の民主的発展に対する大きな試練とその後の政治的動向にも多大な影響を与えた重要な転換点であったと言えるでしょう。

もう一度検索