ソウルの春

ソウルの春

「ソウルの春」とは、1979年10月26日の朴正煕大統領暗殺後から、1980年5月17日の非常戒厳令拡大までの期間を指す政治的な過渡期であり、チェコスロバキアの「プラハの春」を模して名付けられました。この時期、韓国では民主化を求める声が高まり、社会は活気づいていましたが、最終的には全斗煥によるクーデターや光州事件によって、民主化運動は頓挫しました。それでも、1987年の6月民主抗争へとつながる重要な時代として位置づけられています。

背景と政治的変遷

1980年の2月28日、文民出身の崔圭夏大統領は公民権回復措置を発表し、抑圧されていた反体制派の政治的自由が再び保障されました。これにより、金大中や尹潽善といった指導者たちが政治活動に復帰し、新民党の金泳三や民主共和党の金鍾泌なども次期大統領候補として名を連ねるようになりました。こうした動きは、韓国国内の政治的風潮を活発化させ、特に学生運動や労働運動が盛んになりました。

学生運動の盛り上がり

1980年3月、新学期が始まると同時に学生会や教授会が再び活動を開始しました。政治的自由が回復されたことで、さまざまな討論会やデモが開催されるようになり、特に「学園民主化」を求める運動が全国の大学に広がりました。3月27日には朝鮮大学校で初の学内デモが行われ、その後のデモ活動は拡大していきました。学生たちは言論の自由や教授陣の改善を求め、さらには政府への対抗をエスカレートさせました。特に5月15日のソウル駅前での大規模デモは、民主化の機運が最高潮に達した瞬間でした。

労働運動の活発化

また、労働運動も盛んになり、インフレによる生活苦が背景にあったことも影響を与えました。この時期、1980年5月17日までに987件もの労働争議が発生し、20万人以上の労働者が参加したことが報告されています。とりわけ、4月21日に発生した舎北事件では、4000名以上の炭鉱夫が地域を占拠し、抗議活動を展開しました。これにより、労働者たちの要求が社会全体に波及しました。

新軍部の台頭と戒厳令の拡大

一方で、朴正煕政権の後継として全斗煥や盧泰愚が台頭する中、彼らは政治への関与を強めていきました。4月には全斗煥が重要なポストにつき、民主化運動に対する大きな衝撃が走りました。学生たちのデモや労働運動が過激化する中、政府は事態を抑えるべく非常戒厳令を拡大し、5月17日には全国的に政治活動を禁止する措置が発表されました。これに伴い、学生運動や労働運動のリーダーたちが次々と逮捕され、ソウルの春は事実上終息を迎えました。

終息の影響とその後

このようにして、ソウルの春は新軍部の権力掌握によって閉じられましたが、その後の1987年の6月民主抗争へと繋がる土壌がこの時代に築かれました。歴史的に見ても、この時期の動きは韓国の民主化運動における重要な転機であったと言えるでしょう。そして、この期間を描いた作品も登場しており、2023年には「ソウルの春」という映画が公開されるなど、現在においてもその影響が続いています。

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