65式作業服

「65式作業服（ろくごうしきさぎょうふく）」は、かつて陸上自衛隊の隊員に貸与されていた個人被服である。通称「OD作業服」と呼ばれ、オリーブドラブ（OD）色を特徴とする。それまで使用していたアメリカからの貸与品などを刷新し、演習や訓練、各種作業での効率向上を目的に開発された。

初期の素材は綿100%だったが、製造コスト削減とアイロン折り目の持続性向上のため、ビニロンが混紡されるようになった。最終的にはビニロンと綿をそれぞれ50%配合した、破れにくい丈夫な生地で製造された。迷彩戦闘服（迷彩服1型）の導入前や貸与されない部隊では、訓練時に「戦闘服」として使用された。丁寧で丈夫な縫製は隊員に好評で、簡単に解けないことから高く評価された。

貸与数は一人あたり2着だった。支給頻度の少なさと当時の被服としては高い耐久性も相まって、多くの隊員によって徹底的に使い込まれたという。上衣は前合わせがジッパー式のシャツスタイルで、裾はズボンの下にたくし込んで着用した。デザインにゆとりが少なかったため、夏場は熱がこもるなどの問題もあった。

部隊の威容を保つため、袖や脚前後にアイロンで折り目をつけることが強く推奨された。これは実用性よりも見た目を重視したもので、新隊員教育ではアイロン掛けが厳しく指導された。また、背中のシワを伸ばし見栄えを向上させるため、肩甲骨付近に横一本の折り目を入れることも許容されていた。

部外者の目に触れる機会が多い駐屯地警衛隊などの特別勤務では、服装点検があったため、貸与された1着を特別勤務用とし、残りの1着や私物で通常業務をこなす隊員が多かった。現在の自衛隊では戦闘服や迷彩服が合計4着貸与されるため、このような問題は解消されている。

ノーアイロンのポリエステル100%私物もあったが、熱に弱く、溶けた化学繊維が火傷を重症化させる危険性から、一時使用・販売が禁止された。その後、ポリエステル70%・綿30%といった混紡タイプが登場した。

現在、新規調達は終了している。即応予備自衛官を除く予備自衛官などの訓練で中古品が使用されるほか、現職隊員が車両整備などの汚れやすい作業や模擬訓練の敵役として使用することもあった。しかし、2012年度からは予備自衛官訓練も迷彩服（中古）で行われるようになり、徐々に姿を消している。防衛大学校および防衛医科大学校の学生には現在も支給され、使用されている。

長きにわたり、65式作業服は戦闘訓練における標準的な装いであった。背嚢を使用しない訓練では、この作業服に64式7.62mm小銃や66式鉄帽といった戦闘装具を装着するのが一般的だった。迷彩服1型が正式化されるまでは、野外戦闘訓練でも同様であった。演習時には、偽装効果を高めるため偽装網を着用し、草などを付けて身を隠した。携帯エンピは弾帯ではなく、自転車のタイヤチューブなどを利用した手作りゴムバンドで背負うのが伝統的な携行方法だったとされる。

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