7.62x54mmR弾

7.62x54mmR弾：1世紀を超える長寿の実包

7.62x54mmR弾は、1891年にロシア帝国で開発された起縁式の小銃用実包です。モシン・ナガン小銃のために設計され、帝政ロシア時代からソビエト連邦の終焉まで、機関銃や半自動小銃など、様々な銃器で使用されてきました。現在でもロシア連邦軍をはじめ、かつての東側諸国を中心に広く使用されています。

「7.62 ロシアン」という通称でも知られていますが、正式名称の「R」は起縁式（Rimmed）を意味します。これは、薬莢の底部にリム（縁）があることを示しており、弾薬を確実に保持し、装填・排莢を容易にする役割を果たします。7.62x39mm弾（SKSカービンやAK-47で使用）と混同されることがありますが、これらは全く異なる弾薬です。

歴史と背景

7.62x54mmR弾は、現在も主要な軍隊で使用されているものとしては、最も古い実包の一つです。2011年には、採用から120年を迎えました。ドラグノフ狙撃銃やPKM機関銃など、現代の銃器でも使用され続けています。

性能

7.62x54mmR弾の弾道性能は、.308ウィンチェスター弾や7.62x51mm NATO弾に匹敵します。.30-06スプリングフィールド弾（7.62x63mm）と比較すると、腔圧や薬莢容量で劣りますが、現代的な装薬を使用することで、.308ウィンチェスター弾に近い威力を発揮できます。その長寿命と軍事的・歴史的価値から、「ロシアの.30-06」とも呼ばれています。

特徴

7.62x54mmR弾は、ボトルネック形状、起縁式、センターファイア式雷管という特徴を持つ弾薬です。1880年代後半から1890年代にかけて普及したボトルネック形状の起縁式実包は、第一次世界大戦終結までに多くが廃止されましたが、7.62x54mmR弾は例外的に生き残り、現在まで使用されています。

初期の7.62x54mmR弾は、13.7gの丸頭フルメタルジャケット弾頭を使用していました。しかし、日露戦争の経験から、1908年に9.7gの尖頭弾頭に変更され、現在まで標準となっています。ドラグノフ狙撃銃で使用される7N1弾は、弾道精度を高めるために、9.7gのボートテール弾頭を使用しています。

薬莢の構造

7.62x54mmR弾の薬莢容量は4.16mlです。先細りの形状は、悪条件下でもボルトアクション小銃や機関銃での装填・排莢を確実に行えるように設計されています。

法規制

公式C.I.P.ガイドラインによると、7.62x54mmR弾の薬莢は、390MPaまでの圧力を処理できます。C.I.P.加盟国では、安全性を保証するために、最大C.I.P.圧力の125%で試験を行う必要があります。

利用状況

7.62x54mmR弾は、軍放出の中古品や新規生産品が広く入手可能です。狩猟用としても使用されており、スポーツ用に調整されたモシン・ナガン小銃や、ドラグノフ狙撃銃の民間向けモデル（タイガーズ）が使用されています。

派生型

1960年代には、ボストークブランドの射撃競技用小銃で使用するために、6.5x54mmR弾が開発されました。また、1970年代には、7.62x54mmR弾のネック部分を絞った派生型も作られました。

主な使用銃器

モシン・ナガン小銃
ウィンチェスターM1895
ドラグノフ狙撃銃
PKM機関銃

その他の呼称

7.62 ロシアン
7.62 モシン・ナガン
7.62 ドラグノフ

関連項目

7.62x39mm弾
5.45x39mm弾
7.62x51mm NATO弾
* .303ブリティッシュ弾

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