7.92x57mmモーゼル弾

7.92x57mmモーゼル弾：歴史と多様性

7. 92x57mmモーゼル弾、または8mmモーゼル弾、8x57 IS弾は、19世紀末にドイツ帝国で開発された、リムレス・ボトルネック型の小銃用実包です。1905年にドイツ軍に採用されて以来、第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じて、ドイツ軍の主力小銃弾として広く使用されました。その汎用性の高さから、20世紀初頭には世界各国の軍隊で採用されるほど普及し、21世紀に入った現在でも、ヨーロッパやアメリカを中心に狩猟用、スポーツ用として生産が続けられています。

開発の経緯

7. 92x57mmモーゼル弾は、1888年に採用された88年式実包（Patrone 88、7.92x57mmI弾）を原型として開発されました。このM/88は、ドイツ小銃試験委員会(GPK)が開発したもので、弾頭は直径8.08mm、重量14.6gの円頭弾を使用していました。

その後、GPKはM/88の性能向上に取り組み、1905年に口径を若干変更した7.92x57mmモーゼル弾が誕生しました。この際、S口径という名称が与えられました。7.92x57mmモーゼルS弾（7.92x57mmIS弾）は、直径8.2mm、重量9.9gの軽量な尖頭弾を使用し、より強力な無煙火薬を使用することで、M/88に比べて有効射程と低伸性を向上させています。当初は無起縁型薬莢のみでしたが、後にネックダウンやネックアップさせた派生型も開発されました。

軍用小銃弾としての活躍

1905年の開発以来、7.92x57mmモーゼル弾はその高い性能と汎用性から、ドイツだけでなく、多くの国々で軍や警察の制式弾薬として採用され、長年にわたり使用されました。第二次世界大戦中には、9x19mmパラベラム弾と同様に、枢軸国、連合国の双方で使用されるという特異な状況も見られました。ナチス・ドイツやポーランドでは標準小銃弾として採用され、イギリス軍でもベサ車載機関銃の弾薬として使用されました。

2010年代においても、旧ユーゴスラビアで開発されたザスタバM76狙撃銃やザスタバM53機関銃（戦後生産型MG42）などで使用されており、軍用小銃弾としての役割を担っています。

民生用小銃弾としての展開

7. 92x57mmモーゼル弾は、ヨーロッパにおいて猟銃やスポーツ銃の実包としても広く普及しており、多くの企業が製造を続けています。ザスタバ・アームズ、ブレイザー、チェスカー・ズブロヨフカ・ウヘルスキブロッドなどの企業は、現在も7.92x57mmモーゼル弾を使用する猟銃を製造しており、RUAG、ププルヴィ・パルティザンなどの企業が弾薬そのものを生産しています。

レミントン・アームズは2004年に、M700ライフルの7.92x57mmモーゼル弾仕様を限定生産しました。狩猟用銃弾としての性能は、アメリカ製の.30-06スプリングフィールド弾と同等と見なされており、ドイツをはじめとするヨーロッパ各国では、鹿、シャモア、イノシシなどの大型獣の狩猟に使用されています。ただし、フランスのように軍用小銃弾の民間使用を制限している国では、7.92x57mmモーゼル弾は軍用小銃弾とみなされ、所持や使用が禁止されています。

起縁型のバリエーションとして、8x57mm IRS弾があります。これは中折れ式ライフルでの使用を前提に開発されたもので、現在ではヨーロッパにおける中折れ式ライフルの一般的な銃弾として知られています。

多様な名称

長年にわたり、様々な国や用途で使用されてきたため、7.92x57mmモーゼル弾には非常に多くの制式名称、商品名、通称が存在します。

7.9, 7.9mm
7.9 Mauser, 7.9mm Mauser
7.92, 7.92mm
7.92 Mauser, 7.92mm Mauser
Cartridge SA, 7.92
7.92×57, 7.92×57mm
7.92×57 Mauser, 7.92×57mm Mauser
8mm Mauser
8×57, 8×57mm
8×57 Mauser, 8×57mm Mauser
* 8 × 57 IS, 8 × 57 JS

口径の値には、「7.92」の他に「7.9」が使用され、ドイツでは伝統的に口径約8mmの銃弾を「8mm弾」と呼んでいたため、「8」という数字が用いられることもあります。「モーゼル弾」と呼ばれることが多いですが、モーゼル社は銃弾そのものの開発には関与していません。しかし、同社が開発したGew98とKar98kがこの銃弾を使用する代表的な銃器であり、両世界大戦でドイツ軍の制式小銃として使用されたことから、「モーゼル弾」という名称が広く知られるようになりました。

「J」または「I」という文字が付されることがありますが、これは元々「歩兵」(Infanterie)を意味する「I」が薬莢の底に刻印されていたものです。「J」は「I」の崩れた書体を英語話者が読み間違えたことが広まった原因とされています。「S」は尖頭弾(Spitzgeschoß)を意味します。

各規格における名称

欧州のCIP規格では、7.92x57mmモーゼル弾を8x57 IS弾と指定しています。一方、アメリカのSAAMI規格では、8mmモーゼル弾と指定しており、8x57mm弾とも呼ばれています。

ドイツ軍では、7.9mm弾という呼称が使用され、スウェーデン軍ではM/39 8mm銃弾という制式名称が与えられていました。イギリス軍では、7.92 SA弾という制式名称が与えられていました。

設計

7. 92x57mmモーゼル弾の薬莢容量は4.09cm³であり、薬莢形状はボルトアクション式小銃や機関銃への給弾信頼性を重視した設計となっています。

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