7つの習慣

『7つの習慣』とは

『7つの習慣』（原題：The 7 Habits of Highly Effective People）は、スティーブン・R・コヴィーによって1989年に原著が発表され、1996年に日本語版が出版された書籍です。ビジネス書として広く認識されていますが、その内容は成功哲学、人生哲学、自己啓発といった幅広いテーマを扱い、人文・思想、倫理・道徳、人生論など多岐にわたる分野で読まれています。

書籍の概要

日本語版では「個人、家庭、会社、人生のすべて - 成功には原則があった！」という副題が付けられています。ただし、この副題はマーケティング戦略上の理由から追加されたものであり、原著には存在しません。書籍の帯には、「この本を読むことは、あなたの人生における最高の冒険になるだろう。」や「全世界1500万部突破の名著が教える永遠の人間学」といったキャッチフレーズが用いられています。

キングベアー出版によると、本書は2018年時点で44か国語に翻訳され、全世界で3000万部、日本国内でも累計200万部を売り上げるベストセラーとなっています。また、フォーブス誌やチーフ・エグゼクティブ・マガジン、プレジデント誌、ダイヤモンド誌、タイム誌など、多くの著名な雑誌で特集や紹介がされています。

2013年には、旧訳版の内容をより普遍的な原則を伝えることに焦点を当てた新訳版『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』が出版されました。新訳版では、著者の根本的な主張である「人格主義」に重点を置いています。

内容

本書は、アメリカ建国以来200年分の成功に関する文献を調査した結果に基づいています。コヴィーは、初期の150年間の文献が誠意、謙虚、勇気といった不変の原則に基づく人格形成を重視していたのに対し、直近50年間の文献はコミュニケーションスキルやポジティブシンキングなどの表面的なテクニックに終始していることを発見しました。彼は前者を「個性主義」、後者を「人格主義」と定義し、「人格主義」に基づく成功の原則を「7つの習慣」として提示しています。

構成

本書は4つの部と11の章で構成されています。

第一部：パラダイムと原則
インサイド・アウト：真の成功は優れた人格を持つこと（人格主義）であり、社会的な成功や個性の発揮は二次的なものであると述べています。また、人の認識はパラダイムによって左右され、そのパラダイムを変えることで自己変革が可能であると説いています。さらに、原則に従うことの重要性と、内面からの変革（インサイド・アウト）を提唱しています。
7つの習慣の概要：習慣の重要性、7つの習慣の概要（私的成功、公的成功、再新再生）を説明しています。効果性とは、成果と能力のバランスであり、組織での応用例を示しています。また、読者に対し、本書を繰り返し読み、内容を教えるつもりで読むことを推奨しています。

第二部：私的成功
第一の習慣：主体的である：自分の行動や態度を自分で選択し、問題解決に率先して取り組むことの重要性を説いています。コントロールできないことにではなく、できることに集中することを推奨しています。
第二の習慣：終わりを思い描くことから始める：人生の終わりをイメージし、それを基準に日々の行動を決めることの重要性を述べています。ミッション・ステートメント（個人の憲法）を作成することを勧めています。
第三の習慣：最優先事項を優先する：価値観に基づいた効果的な自己管理を行うこと、重要だが緊急でない活動を優先すること、重要でない活動を断ること、人に仕事を委任することを説いています。

第三部：公的成功
相互依存のパラダイム：公的成功には、他人との信頼関係を築くことが不可欠であり、真の相互依存は自立の精神を前提とすることを説いています。
第四の習慣：Win-Winを考える：人間関係における6つのパラダイムを解説し、相互に利益があるWin-Winの合意形成を目指すことの重要性を述べています。Win-Winの原則を支える5つの柱（人格、関係、合意、システム、プロセス）を提示しています。
第五の習慣：まず理解に徹し、そして理解される：まず相手を理解しようと努め、その後で自分を理解してもらうように努めることの重要性を説いています。傾聴の重要性と、効果的なプレゼンテーション方法を解説しています。
第六の習慣：シナジーを創り出す：相乗効果とは、全体の合計が各部分の和よりも大きくなることであり、自分と他者の意見の相違を尊重し、第三の案を創り出すことを説いています。

第四部：再新再生
第七の習慣：刃を研ぐ：肉体、精神、知性、社会・情緒の4つの資源を維持・再新再生することの重要性を説いています。運動、価値観の再確認、読書、人間関係の改善などの例を示しています。
再び、インサイド・アウト：著者の夫婦のコミュニケーション経験を例に、良い習慣を残し、悪い習慣を改め、次の世代に引き継いでいくことの重要性を述べています。また、自己完成には終わりがないことを示唆しています。

その他の内容

本書では、原則と価値観の違いを明確にしています。原則は不変のものであり、価値観は個人のパラダイムであると述べています。また、「7つの習慣」という数は偶然であり、各習慣のカテゴリー分けと「再新再生」の習慣を合わせて7つになったとしています。著者は、第5の習慣（まず理解に徹し、そして理解される）が最も難しいと感じており、原則は常に追い求めるべきものであると述べています。

引用

本書には、さまざまな人物や文献からの引用が多数含まれています。インサイド・アウトの概念に関連して、デイビッド・スター・ジョーダン、ウィリアム・ジョージ・ジョーダン、トーマス・クーンなどが引用されています。また、アリストテレス、イソップ、ガンジー、ゲーテ、パスカルなど、多岐にわたる思想家や作家の言葉が引用されています。

書誌情報

Stephen R. Covey (1989). The 7 Habits of Highly Effective People. Free Press. ISBN 0-7432-6951-9
スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣 : 成功には原則があった！ 個人、家庭、会社、人生のすべて』ジェームス・スキナー・川西茂訳、キング・ベアー出版、1996年12月。ISBN 4-906638-01-5。
スティーブン・R・コヴィー『完訳 7つの習慣 : 人格主義の回復』フランクリン・コヴィー・ジャパン訳、キング・ベアー出版、2013年8月。ISBN 978-4863940246。

特典付き書籍

過去には、映像作品DVD、解説DVD、メッセージCD、講演DVDなどの特典が付いた限定版も発売されています。

関連文献

本書の関連書籍として、『第8の習慣　「効果」から「偉大」へ』や『7つの習慣 最優先事項　「人生の選択」と時間の原則』などがあります。また、家族向けやティーンズ向けにアレンジされた書籍も出版されています。

まんが版

『7つの習慣』を分かりやすく解説したまんが版も複数出版されています。

外部リンク

FranklinCovey JAPAN 公式サイト
スティーブン・R・コヴィー 公式サイト
* リクルートマネジメントソリューションズ 7つの習慣 特集ページ

『7つの習慣』は、個人の成長と人間関係の向上を目指す人々にとって、普遍的なガイドラインを提供する不朽の名著です。

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