82mm迫撃砲BM-37

82mm迫撃砲BM-37：ソ連が生んだ汎用迫撃砲

82mm迫撃砲BM-37は、第二次世界大戦においてソ連赤軍が運用した大隊用迫撃砲です。その設計は、フランスのブラント81mm迫撃砲Mle27/31を参考に改良されたものですが、外見上の際立った特徴はありません。しかし、口径が82mmである点が、この砲の戦略的な価値を大きく高めました。

82mmという口径の戦略的意味

82mmという口径は、敵軍が使用する一般的な81mm迫撃砲との互換性を考慮したものでした。敵の81mm砲弾を鹵獲した場合でも、BM-37で使用することが可能です。しかし、敵側はソ連の82mm砲弾を鹵獲しても自軍の81mm迫撃砲には使用できません。大祖国戦争初期において、この差はドイツ軍への戦力増強を阻止する上で重要な役割を果たしました。

冷戦時代においても、BM-37のこの特徴は共産系の反政府ゲリラ組織にとって有利に働きました。親米・親西側政府軍から鹵獲した81mm迫撃砲弾を有効活用することで、弾薬の調達を容易にし、ゲリラ戦の遂行を大きく支援したのです。

ドイツ軍による鹵獲と利用

大祖国戦争の初期段階では、ソ連軍は劣勢を強いられ、BM-37を含む多数の火砲がドイツ軍に鹵獲されました。鹵獲されたBM-37は、ドイツ軍によって「8.2cm迫撃砲274/2(r)」という名称を与えられ、戦力として利用されました。ただし、81mm砲弾をこれらの砲から発射した場合、砲弾と砲身の間に隙間が生じるため、命中精度は著しく低下しました。

派生型

ソ連の82mm迫撃砲は、生産時期によって以下の4つの型に分類されます。

BM-36: 初期型であり、支持架に逆Y字型の二脚、底盤には長方形のものが用いられました。
BM-37: 最初の改良型であり、底盤が円盤型に変更された他、砲口には二重装填を防止する装置が取り付けられました。戦後も生産が継続され、東側諸国へ大量に供与された他、中国や東欧諸国でライセンス生産が行われました。
BM-41: 支持架の形状が、生産容易性を考慮して逆T字型に変更されました（折り畳み可能）。また、兵士一人でも迅速な運搬を可能とするため、支持架に車輪を取り付けることが可能となりました。
BM-43: 支持架はBM-41と同様の逆T字型ですが、折り畳み機構が廃止され、車輪が固定装備となりました。分解時の支持架の重量と容積が嫌われたためか、戦後の生産は終了しました。

戦歴と運用

BM-37が開発された時期を考慮すると、ノモンハン事件や冬戦争に投入された可能性も考えられますが、具体的な戦歴は不明です。大祖国戦争においては、赤軍の大隊迫撃砲として、より上位の120mm迫撃砲PM-38と共に広く使用されました。第二次世界大戦後も長期間にわたって生産が継続され、中国では53式82mm迫撃砲としてライセンス生産が行われるなど、東側諸国の標準的な迫撃砲となりました。

冷戦時代には、東側諸国の政府軍だけでなく、ベトコンなどの共産系反政府ゲリラ組織にも多数が供与されました。1970年代後半からは、軽量化などの改良が加えられた新型の82mm迫撃砲2B14への更新が進められましたが、多くは予備兵器として保管されていると考えられます。

各国の運用状況（2023年時点）

カーボベルデ：国家警備隊がBM-41を12門保有
カザフスタン：BM-43を保有
マダガスカル：陸軍がBM-37を保有
モルドバ：陸軍がBM-37を75門保有

BM-37は、その設計思想と戦略的な口径により、第二次世界大戦から冷戦時代にかけて、様々な紛争地帯で活躍した迫撃砲と言えるでしょう。

もう一度検索