88式戦車

88式戦車

88式戦車（88しきせんしゃ、正式名称：88式主战坦克、輸出名：ZTZ-88/WZ-122A）は、中国が開発し、1988年に制式採用した主力戦車です。本車は、同時期に開発が進められていた80式戦車の設計を基盤としつつ、開発過程で新たに入手した西側諸国の技術情報を反映させる形で並行して開発されました。80式戦車が主に輸出市場を想定していたのに対し、88式戦車は中国人民解放軍向けの国内仕様として位置づけられています。西側諸国の先進技術を積極的に取り入れたことで、中国の戦車開発技術はある程度の進歩を遂げましたが、全体としては当時の国際的な水準から見て、いわゆる第2世代戦車の範疇に留まり、性能面で際立った特徴は限定的でした。

概要

車体および砲塔の設計は、基本的に80式戦車と共通しています。主砲には、当初の計画から変更され、NATO標準規格であるL7系105mmライフル砲のオーストリア版が搭載されました。後には、より命中精度の高いイスラエル製射撃統制システムを導入した上で、国産の83式105mmライフル砲に変更されています。これにより、APFSDS（装弾筒付翼安定徹甲弾）、HEAT（対戦車榴弾）、HE（榴弾）といった様々な種類の砲弾を発射することが可能となりました。試作段階では125mm滑腔砲の搭載も検討されたと言われています。装甲面では、砲塔部に複合装甲を取り付けることができる設計となっており、後の発展型である88A式戦車では新型の2層型爆発反応装甲（ERA）を装備しています。また、発煙弾発射機も、当初の2発から4発へと増強されました。

エンジンには、先行する69式戦車に搭載されていた580hpディーゼルエンジンを基に、スーパーチャージャーを追加して大幅に強化した12150ZL型4ストロークV型12気筒ディーゼルエンジンが採用されました。この改良により、最高出力は730hpに達し、約38トンの戦闘重量に対して19.2hp/tという高い対重量比馬力を実現し、機動性能の向上に寄与しています。

中国人民解放軍への配備は1980年代後半から開始されました。しかし、本車が登場した時期には、すでに主要な軍事大国ではより高度な第3世代戦車の開発や配備が進んでおり、88式は登場時から性能的に陳腐化している面がありました。特に1991年の湾岸戦争では、中国がイラクに輸出した旧式の59式や69式戦車が、西側諸国のM1エイブラムスやチャレンジャー1といった第3世代戦車に圧倒的な差を見せつけられ一方的に撃破されたことは、中国製兵器の国際的な評価を大きく損ないました。

この戦訓は、中国軍に西側の戦車に対抗できる新型戦車の開発を加速させる喫緊の必要性を認識させました。結果として、88式戦車は約500両が生産された後、1995年には主力戦車としての生産が比較的早期に終了することとなりました。88式戦車は中国の主力戦車としては短命な存在でしたが、西側技術の導入やその後の発展型開発を通じて、中国の戦車技術力の向上に大きく貢献した重要な過渡期の車両と言えます。

武装

主砲：
NATO規格オーストリア製105mmライフル砲（初期型）
83式58口径105mmライフル砲（88A式戦車以降）
搭載可能砲弾：APFSDS、HEAT、HE弾など
その他：イスラエル製射撃統制システム（一部）

バリエーション

88式戦車：当初は80-I式とも呼称されました。ラバー製のサイドスカートや新型射撃統制システムなどを搭載した最初期生産型です。
88B式戦車：名称はB型ですが、実際にはA型より先に配備されました。自動装填装置や新型105mm弾の発射能力、ISFCS-212新型射撃統制システムを搭載しており、88式の中で最も多く生産されたタイプです。
88A式戦車：国産の83A式58口径105mmライフル砲を搭載した型式です。新型の2層型爆発反応装甲（ERA）を装備している点が特徴です。
88C式戦車：別名96式戦車とも呼ばれる発展型です。より高性能な99式戦車と並行して配備され、安価で実用的な主力戦車として位置づけられています。

外部リンク

日本周辺国の軍事兵器

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