A・C・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダ

アバイ・チャラナラヴィンダ・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダ：クリシュナ意識の伝道師

アバイ・チャラナラヴィンダ・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダ（1896年-1977年）は、20世紀後半に世界的な宗教運動を興したカリスマ的な宗教指導者です。インド、カルカッタにアバイ・チャラン・デーとして生まれ、スコットランド教会大学卒業後、製薬会社に勤務していました。しかし、1922年、バクティシッダーンタ・サラスヴァティー・タークルと出会い、ゴウディヤ・ヴァイシュナヴァの教え、特にクリシュナ意識に深く傾倒します。

プラブパーダは、グルであるバクティシッダーンタから、クリシュナ教義を西洋に伝え、聖典を英語に翻訳する使命を与えられます。長年の修行と準備の後、1965年、69歳で単身アメリカに渡航します。資金も後援者もなく、一人の船会社のオーナーの好意により渡航できたという逸話は、彼の強い意志を物語っています。

アメリカでの布教活動とヒッピーとの出会い

ニューヨークのイースト・ヴィレッジで、プラブパーダは新しい生き方を探し求める若者たち、後のヒッピー世代にクリシュナ意識を伝え始めます。1966年、小さな寺院「ク[[リシュナ意識国際協会]]（ISKCON）」を開設し、これは後に世界中に広がる大規模な宗教組織へと発展します。

特にサンフランシスコのハイト・アシュベリー地区では、プラブパーダは1967年のマントラ・ロック・コンサートに参加し、グレイトフル・デッドなどの著名なミュージシャンらと共演します。このイベントは、プラブパーダの教えをヒッピー文化に浸透させる上で大きな役割を果たしました。「ハレー・クリシュナ」のマントラは、この時代サンフランシスコのヒッピー文化の象徴的なものとなりました。

世界への広がりとISKCONの組織化

プラブパーダは、アメリカでの成功を足がかりに、世界各地にISKCONの寺院を設立し、信者を育成していきました。ロンドン、ボストン、ロサンゼルスなど、次々と寺院が開かれ、ロサンゼルス寺院はISKCONの本部として機能するようになります。

1971年にはインドに寺院を建設する計画を実行。マヤプール、ボンベイ、ヴリンダーヴァンの三ヶ所に寺院が建てられ、インド政府関係者も出席した盛大な落成式が行われました。さらに学校も設立され、ISKCONの活動はインドにおいても大きな影響力を持つようになりました。

プラブパーダの思想と教え

プラブパーダの教えの中心は、『バガヴァッド・ギーター』を中心としたゴウディヤ・ヴァイシュナヴァの伝統です。クリシュナを最高人格主神として崇め、グル（師）との師弟関係を通してバクティ（愛情奉仕）を深め、クリシュナ意識に到達することを説いています。クリシュナ意識とは、神との関係性を理解し、人生の意味を見出すことだと説いています。

プラブパーダは、物質的な満足に固執する生き方を否定し、真の幸福はクリシュナへの愛にあると主張します。そのためには、「ハレー・クリシュナ」マントラの唱え、菜食主義、そして4つの戒律（規定原則）の実践が重要だと説きました。ただし、これらの戒律は強制ではなく、自発的な修行として位置づけています。また、動物を殺して食べることに強く反対していましたが、クリシュナが食べるものを頂くという思想を説いています。

プラブパーダはヴェーダ経典や『バガヴァッド・ギーター』を歴史的事実として受け止め、進化論など、自身の信仰に反する学説を批判的に捉えていました。しかしながら、他の宗教の価値も尊重する姿勢も見せており、宗教の本質を「神への愛」と定義付けています。

著作とその後

プラブパーダは数多くの聖典の翻訳や解説書を著し、その著作は世界中で読まれています。日本語に翻訳されたものも多く、彼の思想に触れる機会は容易に得られます。

1977年、81歳で生涯を閉じますが、彼の創設したISKCONは現在も世界中に広がり、多くの信者によってクリシュナ意識の教えが受け継がれています。プラブパーダの生涯と業績は、宗教史における重要な出来事として認識されています。彼の活動は、単なる宗教運動にとどまらず、現代社会におけるスピリチュアリティ探求のあり方に影響を与え続け、多くの人の人生観を変えるきっかけを与えています。

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