A-100 (航空機)

A-100 早期警戒管制機

A-100は、ロシアがベリエフ設計局を中心に開発を進めている最新鋭の早期警戒管制機（AWACS）です。ロシア航空宇宙軍で運用されているA-50「メインステイ」の後継機にあたり、開発名称は「イズジェーリイェ-PM」と呼ばれています。

開発経緯

A-100の開発計画は、2000年代初頭に始まりました。先行計画であるA-50Iの中止を受け、新たなAWACS開発が模索されます。当初は、中国との資金協力を見込み、フェーズドアレイレーダーを搭載する構想が提案されました。しかし、システム開発企業との調整難航や技術的な課題、そしてフェーズドアレイ方式を望んだ中国が独自開発に転換したことなどにより、ロシアはA-100を独自に開発する道を選びました。システム開発は最終的にベガ社が担うこととなりましたが、母機となるIl-76MD-90Aの供給遅延や開発過程での技術的困難に直面し、開発完了や実用化の目標時期は度々延期を余儀なくされました。

試験の進展

開発は段階的に進み、2016年10月にはA-100のシステムを試験するための飛行試験機A-100LL（改修されたA-50ベース）が初飛行しました。この試験機は、搭載システムの実環境での評価に重要な役割を果たしました。Il-76MD-90Aを母機とするA-100初号機は、2017年11月18日に初飛行を達成。その後も予備飛行試験が続けられていますが、近年の国際情勢を受けた経済制裁が開発スケジュールに影響を与えているとの報道もあります。

設計と能力

A-100は、A-50Uの知見を基盤としつつ、全く新しいシステムを搭載します。母機には最新のIl-76MD-90A輸送機が使用されています。中核となる早期警戒システムは、ベガ社開発の「«Премьер-476»（プレミア476）」レーダーです。これは、近代的な半導体素子を用いたアクティブフェーズドアレイレーダー（AFAR）であり、航空機、地上、海上目標の広範囲な探知・追尾能力を備えています。特徴的なのは、レドーム内のアンテナが機械式回転機構を持ち、従来のAWACS機（A-50やE-3など）の2倍にあたる5秒で1回転することです。これにより、高速で移動する目標に対する捕捉能力が向上しています。

予備データでは、プレミア476レーダーは戦闘機を約600km、地上目標を450～500kmの距離で探知可能とされます。同時に300以上の目標を追尾し、最大12機の迎撃機を同時に管制できる高い能力を持つと報告されています。また、より高精度な目標位置特定を可能にする先進的な技術が採用されている可能性も指摘されています。

情報収集・自己防御能力も強化されています。ESM（電子支援対策）用アンテナ、衛星通信用アンテナなどが配置され、高度なシギント（信号情報）収集能力を持ちます。さらに、レーダーに干渉せずに敵の防空兵器からの脅威を回避する自己防御用ジャミングシステムも搭載。新しい高性能コンピューターシステムは、大量の情報処理とオペレーターの作業効率化を担い、A-50と比較して総合的な能力が2～3倍向上すると評価されています。将来的には、無人航空機（UAV）を直接制御する機能も統合される可能性があります。空中衝突回避システム「«Ванта»（ヴァンター）」も標準装備されます。

型式

A-100LL：飛行試験に使用される機体。
A-100：量産を予定している基本型。
* A-100E：輸出向け型式。

運用

ロシア航空宇宙軍は、A-100を2024年から取得開始し、既存のA-50およびA-50U早期警戒機を補完しつつ、最終的にこれらを置き換える計画であると報じられています。過去にはインドへの輸出提案も行われたことがあります。

もう一度検索