ABCホームソング

ABCホームソング：日本の音楽史に名を刻んだ名番組

1952年9月1日から1972年9月24日まで、ABCラジオで放送された長寿音楽番組『ABCホームソング』。この番組は、日本の音楽シーンに大きな影響を与えた、忘れられない存在です。朝日放送専属作曲家、大澤壽人氏の企画により誕生したこの番組は、多くの著名な作詞家、作曲家、歌手たちが参加し、オリジナル歌謡曲の数々を生み出しました。

番組の大きな特徴は、当時としては画期的だった「ヘヴィー・ローテーション」的な選曲手法を取り入れていた点です。ラジオ局やCS音楽専門局が推薦する楽曲を繰り返し放送することで、多くの楽曲が広く聴衆に親しまれるきっかけとなりました。また、『ホームソングコンクール』を開催し、いずみたく氏や嵐野英彦氏など、後に音楽界を代表する作曲家を輩出する登竜門にもなりました。才能ある作曲家たちが、巨匠・三木鶏郎氏に見出される舞台となったのです。

番組開始当初はスポンサーなしで放送され、『ABC・ホームソング』というタイトルでしたが、1954年からは呉羽紡績の一社提供番組となり、『クレハ・ホームソング』に。その後、呉羽紡績の合併に伴い『東洋紡・ホームソング』、そして1967年からは近畿日本鉄道（近鉄）の一社提供番組となり、『近鉄・ホームソング』として番組は続きました。このタイトルで、1972年9月の番組終了まで放送されました。

数多くのスターが歌声を響かせた

『ABCホームソング』には、錚々たる顔ぶれの歌手たちが参加しました。フランク永井氏、北原謙二氏、藤田まこと氏、加山雄三氏、真理ヨシコ氏、天地総子氏など、その名を挙げれば枚挙にいとまがありません。ダークダックス、デューク・エイセス、ボニージャックスといったグループも出演し、番組を盛り上げました。

和田京子氏、楠トシエ氏、宮城まり子氏、越路吹雪氏、雪村いづみ氏、神戸一郎氏、中村メイコ氏、立川澄人氏、淡谷のり子氏、ザ・ピーナッツ、ペギー葉山氏、由紀さおり氏（旧芸名：安田章子名義での参加あり）、仲宗根美樹氏など、時代を彩った名歌手たちが、この番組で数々の名曲を歌い上げました。それぞれの歌手が、番組に個性あふれる歌声を届け、聴衆を魅了しました。

放送エリアとネットワーク

『クレハ・ホームソング』時代には、ABCラジオをキー局に、ニッポン放送（のちのTBSラジオ）、北海道放送、東北放送、信越放送、北日本放送、北陸放送、中部日本放送、ラジオ中国、九州朝日放送、琉球放送など、全国各地のラジオ局で放送されていました。

『甦るABCホームソング』：名曲たちがよみがえる

2009年10月6日から2010年3月30日まで、ABCラジオで『甦るABCホームソング』が放送されました。これは、『ミュージック・バイキング』火曜枠の番組として、かつての『ABCホームソング』で放送された楽曲を年代別に紹介する番組でした。赤崎加林氏が担当DJを務め、懐かしい名曲が再びリスナーの耳に届きました。番組終了後も、ABCラジオは『日曜なつメロ大行進』で、同番組で放送された楽曲を紹介し続けています。

CD化も実現

『ABCホームソング』の楽曲は、2012年3月28日に『ABCホームソング大全』としてCD化され、ウルトラヴァイヴより発売されました。このCDは、番組の歴史と名曲を後世に伝える貴重な記録となっています。

『ABCホームソング』は、単なる音楽番組ではなく、日本の音楽文化に貢献した、重要な番組でした。番組から生まれた名曲の数々は、今もなお人々の心に響き続けています。

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