ACOS-4

ACOS-4：NECメインフレームの基盤OS

ACOS-4は、日本電気（NEC）が開発したメインフレーム向けオペレーティングシステム (OS) であり、ACOSシリーズの一員です。ハネウェル社のOSを基に開発され、現在ではACOS-4/XTおよびACOS-4/XSとして、i-PX AKATSUKI/Aおよびi-PX9800/Sといったハードウェア上で稼働しています。本稿では、ACOS-4のアーキテクチャ、機能、歴史について詳細に解説します。

メモリ管理

ACOS-4は、初期においてはセグメント方式によるメモリ管理を採用していました。これは、プログラムに必要な数の可変長セグメントを割り当てる方式で、最大64KBの小セグメントと最大4MBの大セグメントの2種類が存在し、2階層のセグメント管理テーブルで管理されていました。

その後、セグメント化ページング方式に移行し、各セグメントを4KBのページに分割することで、メモリ管理の効率性を向上させました。現在のACOS-4では、アドレス空間が32ビットから64ビットに拡張されたことで、セグメントのサイズや個数も変更されていると考えられます。

メモリ共有と保護

タスク間のメモリ共有は、「型」と呼ばれる概念によって管理されています。型0は全タスク共有、型2は同一実行グループ内共有、型3はタスクごとに独立したメモリ領域です。型2と型3では、ハードウェアレベルで他のタスクからのアクセスを制限することでメモリ保護を実現しています。

メモリ保護機構としては、マルチオーソリティキー（MAK）を用いたリングプロテクション方式を採用しています。MAKは0～3の4段階の特権レベルを持ち、アクセス権限を制御します。セグメントへの読み書き、実行は、タスクのMAKとセグメントに設定されたMAKの比較によって決定されます。同時に書き込みと実行は原則禁止され、例外的なアクセスはゲートセグメント記述子を用います。

文字コードとファイルシステム

ACOS-4は、内部・外部ともにEBCDIC-カタカナコード（8ビット）を使用し、日本語にはJIPS(E)コードを採用しています。JIPS(J)やNEC内部コードへの変換機能も備えています。

ファイルシステムは、ACOS-2と同様にVTOC（Volume Table of Contents）と呼ばれる管理領域に全ファイルが登録される方式です。ファイル名は英数字とドット(.)で構成され、最大16文字（ドットによる拡張で最大44文字）です。ドット(.)を用いたファイル名拡張により、擬似的なディレクトリ構造を実現しています。この構造はカタログファイルで管理され、UNIXにおけるパーミッション情報に相当するアクセス制御が行われます。初期のシステムではこの機能が未実装の場合もありましたが、現在のネットワーク環境では必須となっています。

標準入出力

ACOS-4は、SYSIN（標準入力）とSYSOUT（標準出力）を備えています。SYSINはJCL（ジョブ制御言語）で指定されたデータ、または端末からの入力を受け付け、SYSOUTはプリンタや端末への出力を制御します。特徴として、SYSOUTを最大26個まで同時に使用できる点が挙げられます（初期は2個）。SPR（標準出力相当）、APR（標準エラー出力相当）といった特定のSYSOUTが、UNIX系の標準出力・標準エラー出力と同様の役割を担っています。

歴史

ACOS-4は、1975年のR3.1から始まり、MVP、AVP、XVP、i-PX、VX、MX、XA、XS、XTといった様々なバージョンがリリースされました。大型機と中型機向けのシリーズが統合されたり、プロセッサの種類（NEC独自プロセッサやIntel Itanium 2）に合わせてバージョンが分岐したりと、ハードウェアの進化に合わせて変化を遂げてきました。2022年には、NEC独自プロセッサNOAH-7を搭載したi-PX AKATSUKIに対応するACOS-4/XTがリリースされています。

まとめ

ACOS-4は、長年にわたる進化とNEC独自の技術によって洗練されてきた、信頼性の高いメインフレームOSです。その複雑なメモリ管理、堅牢なセキュリティ、独自のファイルシステムなど、多くの特徴は、長期間にわたる安定稼働を支える基盤となっています。ACOS-2との比較や、ハードウェアとの密接な関係性も理解することで、ACOS-4の真価をより深く理解できるでしょう。

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