ANAクラウンプラザホテル宇部

ANAクラウンプラザホテル宇部：地域に貢献したシティホテルの軌跡と閉幕

山口県宇部市に40年以上存在したANAクラウンプラザホテル宇部は、2024年3月31日をもって営業を終了しました。このホテルは、単なる宿泊施設を超え、宇部市の発展に貢献したランドマーク的存在でした。その歴史、役割、そして閉幕に至る経緯を詳しく見ていきましょう。

1983年の開業から地域の中核へ

1983年、全日空ホテルズグループの一員として「宇部全日空ホテル」として開業。村野藤吾の設計による宇部興産ビルの西側ホテル棟に位置し、当初から国際会議場を含む充実した設備を誇っていました。宇部興産社長の中安閑一氏の構想に基づき、国際都市を目指した宇部市にとって、外国要人も迎え入れることができるホテルは、市の発展にとって重要な一歩でした。

1200名収容可能な国際会議場は6カ国語の同時通訳設備を備え、政治家や著名人を招いたパーティや講演会、学会、全国大会など、数多くのイベントが開催されました。最上階のバンケットホールからは、周防灘に広がる化学コンビナートや宇部市街を一望できる絶景も魅力でした。

皇室のご利用や歴史的なイベントの開催

開業以来、高松宮宣仁親王殿下や皇太子殿下（当時）など皇室の方々が宿泊されるなど、地域における特別な存在感を示していました。2021年には、宇部市市制施行100周年記念事業の一環として開催された将棋竜王戦七番勝負第4局の会場にもなり、藤井聡太三冠の竜王奪取という歴史的な瞬間を刻みました。

開業時の記念パーティーでは、著名な歌手や演奏家が出演するなど、華々しいスタートを切りました。こうしたイベントは、ホテルが地域文化に貢献してきたことを示す象徴的な出来事です。

リブランドと経営変遷

2011年には「ANAクラウンプラザホテル宇部」としてリブランドされ、リニューアルオープン。インターコンチネンタルホテルズグループの高級シティホテルブランドとしての地位を確立しました。

運営会社である株式会社ユービーイーホテルズは、宇部興産とANAグループの共同出資により設立されました。その後、宇部興産が経営権を取得し、グループ会社として発展を続けました。

閉館の決定と今後の展望

2023年10月、コロナ禍での業績悪化と建物の老朽化を理由に、2024年3月末での営業終了が発表されました。従業員への影響も大きく、地域経済への打撃も懸念されています。

建物の所有権はみどりホールディングスに移転し、宿泊部門は別の事業者に引き継がれる予定ですが、再開時期は未定です。国際会議場の活用についても検討段階です。

高い評価と惜しまれる閉館

ホテルは、その開業当初から高い評価を得ていました。首都圏より割安なフルコースディナーを提供する戦略は、地元客の獲得にも成功し、高い評価を得ていました。宇部市の発展に貢献したホテルの閉館は、地元住民や関係者から惜しまれ、新たな活用方法が期待されています。

アクセス

山口宇部空港から車で10分、宇部新川駅から徒歩5分という好立地も、ホテルの魅力の一つでした。山陽自動車道宇部ICからもアクセスが良く、多くの利用客を集めていました。

ホテル閉館の社会的な影響

ANAクラウンプラザホテル宇部の閉館は、宇部市の観光や経済に大きな影響を与えることが予想されます。特に、国際会議場の閉鎖は、地域におけるMICE誘致への影響が懸念されます。地元関係者からは、建物の歴史的価値や地域貢献を考慮した上で、今後の活用方法について議論が求められています。

もう一度検索