ANSI/TIA-568

ANSI/TIA-568規格について



ANSI/TIA-568規格は、米国[電気通信工業会]が発行し、米国規格協会(ANSI)の認定を受けている、商業用構内配線に関する規格です。この規格は、ツイストペアケーブルや光ファイバーケーブルなど、様々なケーブルタイプを対象としており、配線システムの構築における標準的なガイドラインを提供しています。同様の目的を持つ規格として、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が共同で策定したISO/IEC 11801|ISO_IEC 11801規格が存在します。

規格の歴史



ANSI/TIA-568規格は、1991年に「TIA/EIA-568:Commercial Building Telecommunications Cabling Standard」として初版が発行されました。この規格策定には、60以上の組織が関与し、電子工業会(EIA)が中心となって作業を進めました。その後、規格は改訂を重ね、末尾に英字を追加する形で更新されています。

  • - TIA/EIA-568:1991
  • - TIA/EIA-568-A:1995
  • - TIA/EIA-568-B:2001
  • - TIA/EIA-568-C:2009
  • - ANSI/TIA-568-D:2015
  • - ANSI/TIA-568-E:2020

2011年にEIAは操業を停止しましたが、EIAが設立したTR-42委員会はTIAに引き継がれ、規格の維持と策定を担当しています。規格名称からEIAが削除されたのはこのためです。

規格の適用範囲



ANSI/TIA-568規格は、商業施設やキャンパス環境における拠点間の構内配線を対象としています。具体的には、ケーブルの種類、距離、コネクタ、配線システムの構造、ケーブルの終端規格と性能特性、設置要件、設置後のケーブルテスト方法などを詳細に規定しています。

規格文書は以下の5つのセクションで構成されています。


ケーブルカテゴリ



ツイストペアケーブルの規格では、ケーブルの性能に応じてカテゴリが定義されており、それぞれのカテゴリで信号帯域幅、挿入損失、クロストークなどの通信性能が規定されています。1995年版のTIA/EIA-568-Aでは、カテゴリ3、4、5が定義されましたが、アナログ音声回線用途であったカテゴリ1と2は規格から除外されました。ANSI/TIA-568-C.2-1(2016年6月)以降は、カテゴリ3、5e、6、6A、8のみが定義されています。カテゴリ7や7AはISO/IEC 11801|ISO_IEC 11801で広く用いられていますが、TIAでは正式に承認されていません。

終端の名称と結線



LANケーブル（ツイストペアケーブル）の終端に使用されるRJ-45コネクタのピン配置とその結線順序は、T568AとT568Bの2つの方式で規定されています。ツイストペアケーブルの4ペアの平衡接続では、各ペアの2本の配線をtipとringと呼びますが、これは電話回線で使用されていたフォーンプラグの名残です。

10BASE-Tや100BASE-TXが主流であった時代には、送受の伝送路が独立していたため、接続機器の仕様に合わせて終端結線を変更する必要がありました。しかし、1000BASE-T以降は1ペアで送受を行う物理層方式が主流となり、多くの機器が送受ピン自動判別機能(Auto MDI/MDI-X)を備えているため、終端結線を意識する場面は少なくなりました。

クロスオーバーケーブルとストレートケーブル



ケーブルの両端で異なる結線（片方がT568A、もう片方がT568B）になっているケーブルは、クロスオーバーケーブルと呼ばれます。主に10BASE-Tや100BASE-TXなどの旧規格で使用されました。一方、両端が同じ結線になっているケーブルは、ストレートケーブルと呼ばれます。ストレートケーブルの結線を明示する際は、T568Aストレートケーブル、T568Bストレートケーブルというように表現します。

T568AとT568Bの違いは、緑単色と橙単色、白緑ストライプと白橙ストライプの配線が入れ替わる点のみです。そのため、ケーブルの終端を以下のように変更することで、クロスオーバーケーブルやストレートケーブルを容易に作成できます。

  • - T568Aストレートケーブルの一端をT568Bに加工するとクロスオーバーケーブルになる
  • - T568Aストレートケーブルの両端をT568Bに加工するとT568Bストレートケーブルになる
  • - T568Bストレートケーブルの一端をT568Aに加工するとクロスオーバーケーブルになる
  • - T568Bストレートケーブルの両端をT568Aに加工するとT568Aストレートケーブルになる

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