AR (小銃)

AR (アーセナルAD)

ARは、ブルガリアのアーセナルAD社が開発・製造している自動小銃であり、AKKの輸出向けモデルとして知られています。AKKをベースに、AK-74Mのような現代的な外観と機能性を備え、多様な派生型が存在することが特徴です。

構成

AKKでは、銃床とグリップに独自の赤褐色プラスチックを使用し、ハンドガードは木製でしたが、ARでは銃床、ハンドガード、グリップの全てをAK-74Mと同様の黒色ポリマーで構成しています。ハンドガードとグリップの形状もAK-74MやAK-100シリーズに準じています。レシーバーは切削加工で製造されており、高い耐久性を実現しています。スリングスイベルの位置は、レシーバー左側面後端から銃床後端付近へと変更されています。マガジンは、従来の金属製ではなく、プラスチック製のワッフル状の交差した強化リブが入った新型マガジンを使用しています。

派生型

アーセナルADのARシリーズは、特定のインデックスによって仕様が区別されます。多くのモデルは、レシーバー左側面にAK-74Nなどに見られるサイドマウントレールを備えており、対応する照準器を取り付けることが可能です。

F: AKMSと同様のアンダーフォールディングストックを取り付けた仕様です。
F41: FALのような金属製管状の右側折りたたみストックを取り付けた仕様です。この仕様では、スリングスイベルの位置がAKKと同様にレシーバー左側面後端に移動されています。
S: 短縮された銃身とハンドガード、アーセナル独自の大型フラッシュハイダーを備えたカービン仕様です。ガスブロックはAKS-74Uのようにハンドガード手前まで短縮されています。
T: ポーランドなどで見られる、フロントトラニオンに固定するタイプのピカティニーレールやAR-15パイプに対応した伸縮調整可能銃床、左右と下部の3面にピカティニーレールを取り付けたハンドガード、親指操作可能な小型セレクターを左側面に組み込んだ特殊なグリップを備えた近代化仕様です。このセレクター組み込み型グリップは操作性が向上する反面、グリップの取り替えが難しいため拡張性に欠けます。

軍用仕様

AR: AKKの輸出向け仕様。サイドマウントレールは装備されていません。
AR-F: AKKSの輸出向け仕様。F仕様ですが、AKKSベースのためアンダーフォールディングストックとなっています。サイドマウントレールは装備されていません。
AR-1: ARに独自の細身のバードケージ型フラッシュハイダーを取り付けた仕様です。銃器本体に変更はないと思われます。サイドマウントレールは装備されていません。
AR-1F: AR-Fに独自の細身のバードケージ型フラッシュハイダーを取り付けた仕様です。銃器本体に変更はないと思われます。サイドマウントレールは装備されていません。
AR-M1: ARから発展した最も一般的で普及したモデルです。ガスチューブはAKKのものではなく、角度が垂直に近くガス抜き穴のないAK-74に見られるものに変更され、フロントサイトもAKKのAKタイプからAKMおよびAK-74のタイプに変更されています。銃口にはロシアのAK-200シリーズに取り付けられる比較的大型のフラッシュハイダーを取り付けています。サイドマウントレールは装備されていません。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M1F: AR-M1のF仕様。AKMSと同様のアンダーフォールディングストックを取り付けています。サイドマウントレールは装備されていません。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M1F41: AR-M1のF41仕様。T仕様で見られるセレクター組み込み型グリップを取り付けています。銃口にはAKMと同様の竹槍型マズルブレーキが取り付けられています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M2F: AR-M1Fの銃身を短縮したモデルです。S仕様とは異なり、AK-102/104/105のようにガス導入部まで銃身を短縮しています。この影響で、フロントサイトはガス導入部上に移動しています。銃口にはS仕様に見られるフラッシュハイダーを取り付けています。AR-M1ベースのため、サイドレールは備えられていません。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M2T: AR-M2FのT仕様。標準的なT仕様に加え、サイドレールを追加しています。銃床の変更により、銃床の折りたたみは不可になりました。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M4SF: AR-M1F41をベースにしたS仕様。T仕様に見られるセレクター組み込み型グリップを備えており、ハンドガードにはフラッシュライトが付属しています。照準線を確保するため、リアサイトはレシーバーカバー後端まで下げられ、より簡素なフリップアップサイトに変更されています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M5F: AR-M1F41のピカティニーレール追加モデル。T仕様で見られるピカティニーレール付きハンドガードとレシーバーカバー上部にピカティニーレール、セレクター組み込み型グリップを取り付けています。銃口にはAR-M1に取り付けられていたフラッシュハイダーを取り付けています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M5F41: AR-M1のピカティニーレール追加仕様。F41仕様の折りたたみ銃床とT仕様のピカティニーレール付きハンドガード、セレクター組み込み型グリップ、レシーバー上部にはピカティニーレールが追加されています。銃口にはフラッシュハイダーではなくAKMの竹槍型マズルブレーキが取り付けられており、フロントサイトはAKMタイプではなくAKタイプのものが取り付けられています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M5T: AR-M1のT仕様。サイドレールはなく、AR-M1のフラッシュハイダーはそのまま引き継がれています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M5ST: AR-M5TのS仕様。T仕様のレシーバーカバー上部ピカティニーレールの追加により、リアサイトの位置はAKS-74Uと同様の前方よりの位置のままです。7.62x39mm弾のみを使用します。
AR-M7F: AR-M1のAK-101/103模倣モデル。AK-74MおよびAK-100シリーズのストックを模した折りたたみストックとサイドレールを備えています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M7T: AR-M7FのT仕様。ストックの角度が変更されており、曲銃床化しています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M7SF: AR-M7FのS仕様。T仕様のピカティニーレール付きハンドガードと伸縮調整可能ストック、セレクター組み込み型グリップを備えています。サイドレールは削除されています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M8F: AR-M2FにF41仕様の折りたたみストック、T仕様のセレクター組み込み型グリップ、サイドレールを追加したモデルです。銃口装置は大型フラッシュハイダーからAR-M1のフラッシュハイダーに変更されています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M9: AR-M1のストックを固定ストックに変更し、T仕様のセレクター組み込み型グリップを追加した仕様です。ハンドガードのデザインが変更されています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M9F: AR-M9のストックをF41仕様の折りたたみストックに変更し、サイドレールを追加したモデルです。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M11F: AR-M2FのAK-102/104/105模倣モデル。サイドレールを追加し、ストックをAR-M7FのAK-74MおよびAK-100シリーズ模倣折りたたみストックを追加しています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M12F: AR-M8FのフラッシュハイダーをS仕様の大型フラッシュハイダーに変更したモデルです。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M14F: AR-M1にF41仕様の折りたたみストックとT仕様のセレクター組み込み型グリップ、サイドレールを追加したモデルです。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M14SF: AR-M4SFのハンドガードをフラッシュライトのない通常S仕様ハンドガードに変更したモデルです。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M15F: AR-M1FにT仕様のピカティニーレール付きハンドガード、レシーバー上部ピカティニーレールを追加したモデルです。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M52F: AR-M2FにF41仕様の折りたたみストックとT仕様のピカティニーレール付きハンドガード、レシーバー上部ピカティニーレールを追加したモデルです。大型フラッシュハイダーからAR-M1と同様のフラッシュハイダーに変更されています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M52T: AR-M2FのT仕様。大型フラッシュハイダーからAR-M1と同様のフラッシュハイダーに変更されています。5.56x45mm弾のみを使用します。
AR-M75F: AR-M7FにT仕様のレシーバー上部ピカティニーレールを追加したモデルです。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
AR-M527F: AR-M11FにT仕様のピカティニーレール付きハンドガードとレシーバー上部ピカティニーレール、セレクター組み込み型グリップを追加したモデルです。大型フラッシュハイダーからAR-M1と同様のフラッシュハイダーに変更されており、サイドレールは削除されています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。

LMG: ARの軽機関銃仕様。独自形状のグリップとRPKのものを模した黒色ポリマー製固定銃床、RPK-74MおよびRPK-201/203と同様のハンドガード、二脚を備えています。ガスチューブは角度が垂直に近くガス抜き穴のないAK-74に見られるものに変更されていますが、フロントサイトは変更されていません。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。

LMG-F: LMGのF仕様。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
LMG-M4F: LMGのF41仕様。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
LMG-M54F: LMGにT仕様のレシーバー上部ピカティニーレール、セレクター組み込み型グリップを追加し、ストックをF41仕様の折りたたみストックに変更したモデル。T仕様のピカティニーレール付きハンドガードとレシーバー上部ピカティニーレール、セレクター組み込み型グリップを追加したモデル。5.56x45mm弾のみを使用します。

民間向け仕様

ARシリーズには、セミオートオンリーの民間向け仕様も存在します。これらのモデルは、主に10連マガジンを使用します。

SAR-M1: AR-M1のセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M1F: AR-M1Fのセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M1F41: AR-M1F41のセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M2F: AR-M2Fのセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M2T: AR-M2Tのセミオートオンリー民間向け仕様。ストックは曲銃床化しており、高さ調整可能なチークパッドが追加されています。ハンドガードは上下左右の4面ピカティニーレールに変更されており、左右のピカティニーレールは長いものに変更されています。銃口装置はS仕様のものからAR-M1タイプのものに変更されています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M4SF: AR-M4SFのセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M7F: AR-M7Fのセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M7T: AR-M7Tのセミオートオンリー民間向け仕様。T仕様のストックとハンドガードにSAR-M2Tと同様の改良が施されています。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M9: AR-M9のセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M9F: AR-M9Fのセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M11F: AR-M11Fのセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。
SAR-M14F: AR-M14Fのセミオートオンリー民間向け仕様。ハンドガードはSAR-M2Tと同様の改良を施したT仕様のものに変更されています。5.56x45mm弾のみを使用します。
SAR-M14S: AR-M14Sのセミオートオンリー民間向け仕様。10連マガジンを使用します。7.62x39mm弾と5.56x45mm弾仕様が存在します。

各モデルの特徴と使用国

ARシリーズは、その多様なバリエーションと信頼性から、世界各国の軍隊、警察、法執行機関で使用されています。以下は、主な使用国と各モデルの特徴です。

アフガニスタン
アゼルバイジャン
ブルガリア
ブルンジ
カメルーン：警察がAR-M4SFを使用。
エジプト
ジョージア：AR-M1を3500挺購入。
ホンジュラス：警察がAR-M4SFを使用。
インド
インドネシア：インドネシア国家警察機動隊(BRIMOB)がAR-M1を使用。
イラク：AR-M1とAR-M1Fを使用。
コートジボワール
リビア：AR-M9を使用。
北マケドニア：警察がAR-M1を使用。
フィリピン：フィリピン陸軍創立125年記念パレードにて第1特殊部隊がAR-52Fを所持。
セルビア：ARを使用。
ソマリア：ダナブ旅団が使用。
スーダン：AR-M9を使用。
イギリス
ウクライナ：訓練用にAR-M2Fを使用。
アラブ首長国連邦：AR-M9を使用。
アメリカ合衆国：アメリカ陸軍OPFORがAR-M1を使用。
イエメン：AR-M9を使用。

参考文献

Arsenal AD Official Website
Arsenal Inc. USA