ARL-44

ARL 44：フランスが誇った過渡期の重戦車

ARL 44は、第二次世界大戦終結直後にフランスで開発された重戦車です。ドイツ占領下で秘密裏に開発が始まり、戦後、フランスの戦車技術の粋を集めて製造されましたが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。

開発の背景

1940年、フランスはドイツに敗北し、占領下におかれました。しかし、フランスの技術者たちは密かに戦車開発を続け、戦後の復興に備えていました。CDM（Camouflage du Materiel）という組織が中心となり、様々な制約の中で、75mm砲を搭載した30トン級戦車の開発を目指しました。この計画には、トロリーバスや雪かき車など、多岐にわたる技術が応用されていました。

1944年、パリが解放され、フランス臨時政府が誕生すると、列強としての地位を取り戻すために、戦車生産の再開が急務となりました。フランスはかつて世界有数の戦車生産国でしたが、その技術は時代遅れとなっていました。そこで、ARL 44の開発は、技術者の確保と技術の伝承という重要な目的も担っていました。

設計と構造

ARL 44の設計は、ルノーB1などの戦前のフランス戦車を参考に、DEFA（Direction des Etudes et Fabrications d'Armement）が担当しました。しかし、当時のフランスは世界の技術開発から孤立しており、旧式な設計に頼らざるを得ませんでした。その結果、ARL 44はルノーB1と同じ旧式のサスペンションを採用し、最高速度は時速30キロに制限されました。

一方、武装は当時の最新技術が投入されました。当初は75mm砲を搭載する予定でしたが、戦車士官の意見により、120mm厚の傾斜装甲と、連合軍がまだ運用していない長砲身90mm砲を搭載することになりました。この90mm砲は、V号戦車パンターの7.5cm戦車砲よりも高精度であることが証明されました。

ARL 44の車体は長く、第一次世界大戦の設計思想を受け継いでいましたが、砲塔は比較的新しい設計でした。しかし、90mm砲を支えるには十分な大きさではなく、間に合わせの解決策が取られていました。全体的に見ると、ARL 44は不十分で洗練されていない設計であり、過渡的な戦車と言えるでしょう。

運用とその後

ARL 44は、第503戦車連隊に配備され、1950年から運用されました。しかし、信頼性に乏しく、ブレーキやギアボックス、サスペンションに問題が多発しました。改良プログラムによって改善されたものの、公的な場に登場したのは1951年のフランス革命記念日のパレードのみでした。

その後、アメリカから供与されたM47パットンが配備されることになり、ARL 44は1953年までに段階的に退役しました。退役した車両は、展示用や射撃標的として再利用されました。

現存車両と登場作品

現在、ARL 44は3輌が現存しており、ソミュール戦車博物館などで見ることができます。また、アニメ『ガールズ&パンツァー 最終章』やゲーム『War Thunder』などにも登場しています。

まとめ

ARL 44は、フランスが戦後の復興期に開発した重戦車であり、多くの技術的な問題を抱えていましたが、フランスの戦車開発技術の伝承に貢献しました。その教訓は、後のAMX-50の開発に活かされ、フランスの戦車開発の歴史において重要な役割を果たしました。

もう一度検索