ASM-N-2 BAT

ASM-N-2 BAT: 自動誘導爆弾の先駆者

ASM-N-2 BATは、アメリカ軍が第二次世界大戦末期に開発した画期的な自動誘導爆弾です。この技術は、初めて現実の戦場で自動的に目標を追尾する爆弾としての特性を持ち、戦争の戦術に新たな局面をもたらしました。BATは、最終的にはBomb MK 57、またはSWOD MK 9とも呼ばれましたが、その開発の背景には、従来の手動誘導爆弾の限界を克服しようという試みがありました。

ドイツ軍の前進技術

日本が先行して開発したフリッツXやHs 293などのドイツ製誘導爆弾は、手動で誘導する方式でした。これに対し、BATは完全に自動化された誘導方式を実現するため、1942年から開発がスタートしました。

開発の流程と課題

アメリカの合衆国海軍武器局は、特殊な爆弾を開発する特別計画SWODを立ち上げました。その中で、BATの前身であるSWOD MK9が設計され、さまざまな誘導技術が検討されました。テレビやレーダー、目視による誘導方式などが試みられましたが、多くは失敗に終わりました。面白いことに、プロジェクトの一環として「鳩」を誘導装置に用いる試みもあったが、真剣な結果をもたらすことはありませんでした。

BATは、レーダー誘導を採用しており、発射後自動で目標に向かうシステムを搭載していました。具体的には、機首に取り付けられたレーダーが反射波を追跡し、目標に命中する仕組みです。この技術は、今日のハープーンなどの誘導ミサイルに非常に近いものです。

実戦配備と戦果

1945年に開発が完了し、実戦に投入されましたが、その運用にはいくつかの制約がありました。地形の起伏や遮蔽物が近くにある環境では、正確に誘導できない問題を抱えていたのです。初めての実戦使用は1945年4月23日で、アメリカ海軍のVPB-109がボルネオ島の日本船に対してBATを2機投下しましたが、命中しても撃沈が確認されなかったとされています。

その後も、BATはボルネオ近海や韓国沿岸での攻撃に使用されましたが、確認された戦果はごくわずかでした。特に5月27日の朝鮮海峡で及ぼした損害については、疑問視されています。さらに、ビルマでの橋破壊の報告もあったものの、その実行は困難で、他の作戦の成績として誤認されている可能性も高いです。

終戦とその後

終戦までに合計2,580機が製造されましたが、その多くは未使用のまま幕を閉じました。1947年頃には誘導ミサイルとして再分類され、新たな試みが行われるも、その結果は失望的でした。レーダー干渉が確認されたことで、戦場での効果的な使用がなお難しかったのです。1953年には改良型の開発計画も立てられましたが、結局このプログラムは中止され、BATの歴史はここで幕を下ろしました。

技術的な遺産

BATは戦果としては明確に成功を収めることができませんでしたが、兵器史としての重要性は否めません。自動誘導爆弾としての技術は、その後の兵器開発に影響を与えることはなかったものの、兵器史上における革新的な一歩を示しています。これにより、現代の無人攻撃システムや誘導兵器の開発につながる基盤が作られたとも言えるでしょう。

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データ

• - 全長: 3.63m (11ft)
• - 翼幅: 3.05m (10ft)
• - 重量: 850kg
• - 速度: 480km
• - 最大射程: 約32km（ただし実際にはこの距離での効果は疑問）
• - 弾頭重量: 450kg

BATは、その独特な設計と自動誘導機能をもって歴史に名を刻んだ兵器であり、今後の技術発展に向けた礎となりました。

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