ASMP (ミサイル)

ASMP（Air-Sol Moyenne Portée / 中距離空対地ミサイル）は、フランスのアエロスパシアル（現MBDA）が開発した空中発射型の巡航ミサイルです。フランスの核抑止力（Force de frappe）の中核を担い、全面的な核戦争への移行を抑止する最終段階での使用を想定されています。後に射程延伸型であるASMP-Aが開発されました。

開発の経緯

ASMP計画は1976年に開始され、1978年から開発が本格化しました。ミサイル本体はアエロスパシアル（現MBDA）が担当し、核弾頭はフランス原子力委員会が開発を担当しました。

設計

ASMPは円筒形の胴体を持つミサイルで、左右側面にはラムジェットエンジン用の空気取り入れ口を備えた長い箱型のダクトが設けられています。このダクトが揚力を生み出すため、主翼は装備されていません。ダクト後部には4枚の操舵フィンが配置されています。

推進方式には、特徴的な固体ロケット・ラムジェット統合推進が採用されています。これは、固体燃料ロケットモーターとラムジェットエンジンを一体化したもので、ロケットモーター燃焼室に充填された固体燃料の燃焼によってマッハ2まで加速した後、空になった燃焼室に燃料を吹き込み、ラムジェット推進に切り替わるという仕組みです。

誘導は、慣性航法と地形参照を組み合わせることで行われます。弾頭には熱核爆弾（水素爆弾）が搭載されており、初期型のTN80は100-300ktの出力を持ち、後継型のTN81では150ktと300ktの出力を選択可能です。

配備と運用

ASMPは1986年からフランス空軍に配備され、ミラージュIV爆撃機に搭載されていたAN-22核爆弾を代替しました。1988年7月にはミラージュ2000N戦闘爆撃機にも搭載され、1989年からはフランス海軍にも配備が開始され、シュペルエタンダール艦上攻撃機に搭載されていたAN-52核爆弾を代替しました。現在では、ラファール戦闘機による運用も可能となっています。ASMPは合計90発が生産され、2000年時点での保有数は、空軍が60発（弾頭42発）、海軍が24発（弾頭20発）でした。

ASMP-A

ASMP-A（Ameliore）は、2000年4月から開発が開始された射程延伸型です。巡航速度が500km/h向上し、射程も500kmに延伸されています。2006年1月16日には、ミラージュ2000Nによって最初の試射が行われ、2009年からミラージュ2000Nに、2010年からはラファールに搭載されています。

参考文献

嶋田久典「ダッソー ミラージュ2000」
青木謙知「軍用機ウエポン・ハンドブック」

関連項目

MBDA
巡航ミサイル
核ミサイル

外部リンク

FAS

もう一度検索