AT105 サクソン

AT105 サクソン：イギリス生まれの装甲兵員輸送車

AT105 サクソンは、イギリスのGKN サンキー社によって開発された装甲兵員輸送車です。AT100 IS計画に基づき、AT104計画を基に設計されました。

開発コンセプトと設計

サクソンは、「戦場タクシー」という費用対効果の高いコンセプトに基づいて設計・開発されました。軽装甲の装輪装甲車は、路上での速度性能で装軌式車両を上回り、さらに多くの部品を民生用トラックから流用することで、整備・維持費用の削減に貢献することを目指しました。最終的には、1台あたり10万ポンド(3,200万円相当)での生産を可能としています。

サクソンの装甲は、小火器の弾丸や榴弾の破片に対する防御力を持っていますが、対装甲車両・対戦車兵器に対する防御力は限定的です。車体底面は、対戦車地雷対策としてV字型の形状となっており、地雷が爆発した際に爆風と爆圧を車体外部へ逃がすように設計されています。武装は、対空自衛用の機関銃1挺のみとなっています。

エンジンは、車体前部の操縦席の反対側に配置されており、後部の兵員室には10名を収容できます。車台はベッドフォードMk4tトラックを流用しているため、イギリス式の右ハンドル車となっています。車体前方左側にエンジンが配置されていますが、輸出用の左ハンドル型では操縦席とエンジンの配置が逆になっています。

運用実績

サクソンの生産は1978年から開始されましたが、海外販売が先行したため、最初に配備されたのは、西ドイツに駐屯するイギリス陸軍ライン軍団所属の第3歩兵師団でした。1983年には、同師団所属の4個機械化歩兵大隊に配備されました。

多数のサクソンIS（サクソン・パトロール）は、北アイルランド紛争において、サーチライトやワイヤーカッターなどを装備して、旧式のFV603 サラセンと共に警備任務に従事しました。暴動発生時には、車体左右に装備された金網を展開して暴徒の進行を阻止すると共に、イギリス軍鎮圧部隊の盾として活躍しました。また、車体容積の広さを活かして救急車としても運用されました。

旧ユーゴスラビアにおいては、地雷処理車両として広く活躍しました。

イギリスは1983年からサクソンを導入し、最終的には700輌以上が完成しましたが、イギリス軍からは2016年までに退役しました。その後、ウクライナやヨルダン、ソマリアなどで再就役しています。

派生型

サクソンには、様々な派生型が存在します。

AT105A: 戦場救急車型
AT105E: 機関銃を1挺ないし2挺装備した砲塔を搭載した型
AT105MR: 81mm迫撃砲運搬車
AT105C: 指揮統制車

この他にも、ミラン対戦車ミサイルを搭載した戦車駆逐車仕様などの派生型が存在します。

採用国

サクソンは、以下の国々で採用されています。

イギリス
バーレーン
ブルネイ
クウェート
マレーシア
ナイジェリア
オマーン
ヨルダン
ソマリア
セルビア
* ウクライナ

サクソンは、その費用対効果の高さから、様々な国で採用され、多様な任務で活躍しました。

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