Amazon SimpleDB

Amazon SimpleDBは、Amazon.comが提供する分散データベースサービスであり、Amazon Web Services (AWS) の一部として、Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) やAmazon Simple Storage Service (S3) とともに利用されることが多いWebサービスです。2007年12月13日にサービスが開始されました。

分散システムとしての特性

SimpleDBは、分散データベースとしての特性上、CAP定理における「一貫性」よりも「可用性」を重視した設計となっています。そのため、書き込み処理を実行した後、データが実際に読み込める状態になるまでには、一貫性読み込みを指定しない限り、わずかな遅延（1秒以下程度）が発生する場合があります。この非同期的な特性は、システム設計時に考慮する必要があります。

SimpleDBは、Erlangプログラミング言語で記述されており、その並行処理能力を活用しています。

課金体系

SimpleDBの利用料金は、EC2やS3と同様に、ストレージの使用量、データ転送量、およびインターネットへの転送量に応じて課金されます。しかし、2008年12月1日には、1GBのデータとマシン稼働25時間までは無料となる新料金体系が導入されました。これにより、小規模な利用やテスト環境での利用が容易になりました。また、同一地域内の他のAWSサービスへのデータ転送は無料となっています。

クエリとデータモデル

SimpleDBでは、SQLに似た構文でクエリを実行できますが、実際には関係データベースではないため、JOIN操作はサポートされていません。また、スキーマレスなデータモデルを採用しているため、カラムにデータ型を明示的に指定する必要はありません。数値はクエリの中で自動的に数値として扱われ、日付はISO 8601形式で表現されます。インデックスも自動的に作成されるため、データベース管理の手間を軽減できます。さらに、一つのカラムに複数のデータを持たせることができる柔軟性も備えています。

文字列検索においては、LIKE句を用いて前方一致、後方一致、部分一致の検索が可能で、多様なデータ検索ニーズに対応できます。

トランザクション制御

SimpleDBは、完全なトランザクション処理をサポートしていませんが、Conditional PutとConditional Deleteという機能を提供しています。これらの機能により、特定のカラムが指定された値である場合にのみ、データの更新や削除を行うことができます。この仕組みを活用することで、データの一貫性を保ちながらデータの変更が可能です。また、データにバージョン情報を付与したカラムを追加することで、楽観的並行性制御を実現することもできます。

制約

SimpleDBには、以下のような制約が規定されています。

ストレージに関する制約
クエリに関する制約

これらの制約を考慮しながら、システムを設計・運用する必要があります。

参考文献

Amazon SimpleDB 公式ドキュメント

外部リンク

Amazon SimpleDB公式サイト

ライブラリ

SimpleDBを利用するための公式およびコミュニティのライブラリが提供されています。

AWS SDK (Java, .NET, PHP): AWSが公式に提供する各種言語向けのSDKです。
M/DB: SimpleDBとAPI互換性を持つフリーのオープンソース代替ソフトウェアで、ローカルおよびクラウド上のデータベースに接続可能です。
simplejpa: Java Persistence API (JPA) でSimpleDBにアクセスするためのインターフェースです。
typica: SimpleDBのAPIをラップしたライブラリです。

代替実装

SimpleDBの代替となる実装やツールも存在します。

NSimpleDB: SimpleDBのデータモデルをデスクトップアプリケーション用にC#で実装したオープンソースソフトウェアです。SimpleDBのプロキシとしても利用可能です。
simpledb-dev: SimpleDBの開発を支援するツールです。

これらの情報を通じて、Amazon SimpleDBの特性、使い方、および関連技術について深く理解を深めることができるでしょう。

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