Anti-Heroine

浜田麻里『Anti-Heroine』：新たな挑戦と葛藤の記録

1993年3月20日にリリースされた浜田麻里の13枚目のアルバム『Anti-Heroine』は、彼女のキャリアにおいて重要な転換期を示す作品である。前作『TOMORROW』までサウンドプロデュースを手掛けていたグレッグ・エドワードとの関係に終止符を打ち、新たなプロデューサーとしてマーク・タナーを迎えたことで、制作環境は大きく変化した。

制作の舞台裏

浜田はグレッグとの間に深刻な意見の相違があり、彼との制作に「もう嫌だ」と感じるほどだったという。このことが、グレッグとの決別、そしてMCAビクターへの移籍と同時に、日本のみならず世界を視野に入れた活動へとシフトするきっかけとなった。MCAの紹介で出会ったマーク・タナーは、アメリカのロックバンド、マーク・タナー・バンドのメンバーであり、彼の起用は浜田にとって大きな挑戦であった。

浜田はタナーの制作スタイルを「ある程度までできているデモを叩き台にして、どんどん発展させていって、ヒット性を含む曲にまで昇華させる」と評価しつつも、「グレッグとは全然違う、ちょっとダメなところがある」と率直に語っている。彼女は、制作において周りからの大きな信頼を得ることが重要であり、そのためには絶対的な正当性が必要だと考えていた。そのため、タナーとの制作では、浜田自身が調整役の半分を担っていたという。しかし、タナーのフックを意識した楽曲制作には才能を感じており、結果的には良い影響を受けたと振り返っている。

当時、MCAビクターにおいて唯一の邦楽アーティストであった浜田は、自身の売り上げがレーベルの命運を左右する状況にあった。そのため、会社全体からのバックアップを感じる一方で、大きなプレッシャーも背負っていた。マーク・タナーのパーソナリティに対しては良いイメージを持っていないものの、彼の楽曲制作スタイルは、現在の浜田の音楽スタイルに影響を与えている可能性すら感じていると語っている。

タイアップと商業的成功

本作には5曲のタイアップ曲が収録されており、浜田自身も「やっと成功しているアーティストに片足をつっ込めた」と語るように、商業的な成功を収めた作品となった。しかし、浜田にとって最も重要なのは作品に対する満足度であり、それが活動のベースになっているという。幼少期からレコーディング畑でキャリアをスタートした彼女にとって、レコーディングはライブ活動の基礎となるものであり、ファンが求めるライブ中心の活動とは若干の乖離があることを認識していた。

チャートと評価

アルバムはオリコンチャートで1位を獲得し、年間チャートでも29位にランクインした。これは1989年のアルバム『Return to Myself』以来の快挙であった。しかし、世間一般には『Return to Myself』の印象が強く、現在でもテレビ番組では同曲の歌唱依頼が最も多いという。このため、『Anti-Heroine』や前作『TOMORROW』はセールス的に成功していたものの、「浜田麻里は見なくなった」「売れなくなってフェードアウトした」という印象を持たれていたという。しかし、チケットは即完売しており、1993年6月18日には日本武道館でのライブも開催された。

音楽雑誌『CDジャーナル』は、浜田の歌唱力に関して「女性らしいしなやかさと力強さの融合、最近の彼女はこの2つのバランスを有効的に活性化させている」と評価し、「ポップス、バラード、そしてロック、基本のエッセンスを巧みに料理し、やっぱり浜田麻里、と納得させるクオリティを今回も披露」と肯定的に評価している。

収録曲

CD盤













CT盤, DCC盤

参加ミュージシャン

メディアでの使用

リリース日一覧

脚注

外部リンク

Mari Hamada Official Siteによる紹介ページ
Anti-Heroine


『Anti-Heroine』は、浜田麻里にとって大きな変化と挑戦の時期を象徴する作品であり、その後の音楽活動に大きな影響を与えたアルバムと言えるだろう。

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