Apple II

Apple II：パーソナルコンピュータ革命の立役者

1977年、Apple Computer社（現Apple Inc.）からApple IIが登場し、世界に衝撃を与えました。Apple Iの成功を踏まえ、専門知識がなくても使えるコンピュータを目指して開発されたApple IIは、当時としては画期的なオールインワン設計でした。キーボード、CPU、メモリ、ディスプレイ出力、音声出力、そして外部記憶装置とのインターフェースを一つの筐体に統合した、まさにパーソナルコンピュータの原型と言える存在でした。

Apple Iが部品を自分で組み立てるキットだったのに対し、Apple IIは完成品として出荷され、一般ユーザーが容易に利用できる点が大きな違いでした。この点が、Apple IIの市場における成功を大きく後押ししました。

家庭への浸透と教育現場での活用

Apple IIはコンピュータ愛好家に広く受け入れられ、それに伴い多くのアプリケーションソフトウェアが開発されました。特に、家庭ユーザーや教育現場での利用が急速に拡大し、米国においてホームコンピュータという市場を確立するのに大きな役割を果たしました。

フロッピーディスクとVisiCalc：普及を加速させた2つの要素

Apple IIの成功には、2つの重要な要素が挙げられます。1つは、1978年に発売されたフロッピーディスクドライブDisk IIです。当時としては非常に安価で、データの保存と読み込みを容易にしました。もう1つは、1979年に登場した表計算ソフトVisiCalcです。このソフトはディスクベースで提供され、ビジネスシーンでのコンピュータ利用を広げるきっかけとなりました。

これらの要因により、Apple IIの販売台数は年々増加し、1978年の7,600台から、1982年には約30万台にまで達しました。生産は1993年まで続き、総計500万台以上が生産され、パーソナルコンピュータの普及に大きく貢献しました。日本でも、1980年に東レが販売総代理店となり、Apple II J-plusなどを含め、数多くの台数が販売されました。

Apple IIの技術的特徴

Apple IIは、スティーブ・ウォズニアックによってほぼ単独で開発されました。その特徴は、以下の通りです。

オールインワン設計: キーボード、CPU、メモリ、ディスプレイ出力、音声出力、外部記憶装置インターフェースを一体化。
カラーグラフィック表示: 家庭用テレビに直接カラー表示が可能。これは、当時の個人向けコンピュータでは非常に珍しい機能でした。テキストモードに加え、低解像度（40×48ドット、15色）と高解像度（280×192ドット、6色）のグラフィックモードを備えていました。ビデオメモリの設計は独特で、1ピクセルに1ビットの情報量しか持たないものの、隣り合うピクセルの組み合わせで色表現を可能としていました。
拡張性: 8つの拡張スロットを備え、様々な周辺機器を接続可能。自作拡張カードも容易に作成でき、サードパーティからの豊富な拡張カードが提供されました。スロット0番と7番は特殊な仕様で、それぞれROMエリアとの切り替えや、PAL/RGB信号出力などに使用されました。
ゲームへの対応: ゲームパドルとブロック崩しゲームが標準添付され、ゲーム開発にも最適な環境を提供。2つのA/Dコンバータを備えたゲームI/Oポートにより、ジョイスティックなどの接続も容易でした。
BASICインタプリタ: Integer BASICとApplesoft BASICを搭載。後者は浮動小数点演算をサポートしていました。

バリエーションと後継機

Apple IIは、その後のモデルで機能拡張が繰り返されました。主なバリエーションは以下の通りです。

Apple II plus: オートスタートROMの搭載、パワーランプの改良など。
Apple II J-plus: 日本向けモデル。カタカナ表示に対応。
Apple IIe: メモリ拡張による80桁表示、ダブルハイレゾグラフィック対応など。
Apple IIc: 拡張スロットを廃して小型化。
Apple IIGS: 16ビットCPU搭載。大幅なグラフィックとサウンドの強化。

AppleはApple IIシリーズの成功にも関わらず、ビジネス市場向けに開発されたApple IIIに注力しましたが、これは商業的に失敗しました。

Apple IIとMacintoshキーボードの関係

Apple IIe以降のApple IIとMacintoshのキーボードには、Appleマークのキーが存在します。Macintoshのコマンドキーは、当初Appleマークとクローバーマークが並んだデザインで、Apple II GSのキーボードの高評価から、中古市場でApple II GSのキーボードがMacユーザに人気となる現象も起きました。

Apple IIの遺産

Apple IIは、パーソナルコンピュータの普及に大きく貢献しただけでなく、後のMacintoshシリーズにも影響を与えた重要な機種です。その拡張性と柔軟性、そして家庭向けコンピュータとしての成功は、後のコンピュータ業界に大きな足跡を残しました。Apple IIの登場は、まさにパーソナルコンピュータ革命の始まりだったと言えるでしょう。

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