Autodesk Inventor

Autodesk Inventor（オートデスク インベンター）は、オートデスク社が提供する製造業向けの3次元CADソフトウェアです。このソフトウェアは、2次元CAD市場で圧倒的なシェアを誇っていたAutoCADの資産を活かしながら、3次元設計の需要に応えるために開発されました。

開発の背景

AutoCADは中小企業向けの2次元CAD市場で業界標準としての地位を確立していましたが、大企業向けにはPTCのPro/ENGINEERのような高機能な3次元CADが普及し始めました。これにより、中小企業でも3次元化のニーズが高まりました。オートデスクは、この市場の要求に応えるため、AutoCADの2次元図面資産を活かしつつ3次元化も可能なAutodesk Mechanical Desktopをリリースしました。これはAutoCADを基本システムとし、3次元モデルの作成も可能にしたもので、基本操作はAutoCADと同じでした。しかし、3次元化のためにコマンドが増え、操作環境もMS-DOS時代を継承していたため、3次元モデリングは容易ではありませんでした。

さらに、SolidWorksやSolid Edgeといったミドルレンジの3次元CADが、使いやすいWindows準拠の操作環境やフィーチャーベースモデリングによって人気を集めました。これらのCADは2次元図面作成機能も充実させてきたため、AutoCADの市場を脅かす存在となりました。オートデスクはこれに対抗するため、1999年にAutodesk Inventorをリリースしました。

初期の課題と進化

当初、AutoCADのユーザーは2次元図面の資産を捨てられず、オートデスクもそれを考慮したため、Autodesk Mechanical Desktopとの併売となりました。Autodesk Inventorは、他のミドルレンジ3次元CADと同様の操作環境を目指し、全く新しいプログラムとして登場しましたが、AutoCADの図面を満足に読み込めないという欠点がありました。これにより、操作環境や大規模モデルへの対応、モデリング処理において他のCADに劣る点が目立ち、販売は伸び悩みました。

しかし、3次元化が進むCAD市場で他社製品にシェアを奪われる状況を打破するため、オートデスクは2001年のバージョン5から開発とマーケティングの軸足をAutodesk Inventorに移しました。2005年のバージョン10からはAutoCAD図面にもほぼ完全に対応し、連携した操作も可能となりました。さらに、Autodesk InventorにAutoCAD Mechanical（当初はAutodesk Mechanical Desktop）を同梱することで、従来のAutoCADユーザーやAutodesk Mechanical DesktopユーザーをAutodesk Inventorに誘導し、現在ではオートデスクの製造業向けCADシステムの中心となっています。

Autodesk Inventorの商品構成

Autodesk Inventorには、複数の商品構成があります。

Autodesk Inventor Suite: Autodesk Inventor本体、AutoCAD Mechanical、Autodesk Vault（設計履歴管理）が含まれます。
Autodesk Inventor Simulation Suite: Autodesk Inventor Suiteに加え、ダイナミックシミュレーション（機構解析）、構造解析機能が追加されています。
Autodesk Inventor Routed Systems Suite: Autodesk Inventor Suiteに加え、チューブ＆パイプ設計、ケーブル＆ハーネス設計、IDFインポート機能が追加されています。
Autodesk Inventor Professional: Autodesk Inventor Simulation SuiteおよびAutodesk Inventor Routed Systems Suiteのすべての機能が含まれます。

これらの商品構成により、ユーザーはそれぞれのニーズに合った機能を選択することができます。

Autodesk Inventorは、初期の課題を乗り越え、現在では製造業の3次元設計において重要な役割を果たしています。AutoCADとの連携を強化し、ユーザーフレンドリーな操作環境を提供することで、幅広いユーザーに支持されています。

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