BD +20°307
BD +20°307
おひつじ座の方向、約300光年の距離にある恒星BD +20°307は、太陽と非常によく似た特徴を持つG型主系列星の連星です。当初は単独星と考えられていましたが、観測により二つの恒星が互いの周りを公転する連星であることが明らかになりました。
連星系の性質
BD +20°307を構成する二つの恒星は非常に接近しており、約3.42日という短い周期で共通重心を公転します。それぞれの恒星は直径や質量において太陽と酷似しており、質量比は約1:0.91、表面温度差は約250Kです。
恒星の年齢
この連星系の年齢は、周辺に塵の雲が発見された当初は数億年程度と推測されましたが、恒星のリチウム濃度分析の結果、少なくとも10億年以上、あるいは数十億年が経過している可能性が指摘されています。
特異な塵の雲
BD +20°307の周囲、恒星から約1天文単位の範囲には、珪酸塩を主成分とする大量の塵からなる雲が存在します。その量は太陽系の塵の実に100万倍に達します。初期の推測では若い恒星系の惑星形成段階の名残と考えられましたが、恒星が古いことが判明しこの説は否定されました。
この塵の雲の温度は約120Kと比較的高く、数千年から数万年といった短い期間しか維持されない状態であることが示唆されています。このことは、塵の雲が恒星系の年齢に比べてごく最近になって生成されたものであることを強く示唆しています。
塵の雲の起源：惑星衝突の可能性
塵の雲が最近生成された原因として、有力な説は二つあります。一つは、系内の天体が頻繁に衝突を繰り返すようになったというもの。もう一つは、数千年ほど前に地球サイズあるいはそれに匹敵する大きさの二つの天体が、破滅的な衝突を起こして砕け散った結果生じたというものです。
特に後者の惑星衝突説は、BD +20°307のような近接連星系においても惑星が存在し得るという可能性を間接的に示す、重要な観測的証拠として注目されています。連星間の強い重力が惑星形成や安定軌道を妨げると考えられてきた中で、この発見は連星系の惑星系進化に関する理解を深めるものです。
推定される衝突規模は太陽系で言えば金星と地球の衝突に匹敵し、仮に衝突した惑星に生命が存在したとしても数分で滅び去ると考えられます。太陽系でも月の誕生はジャイアント・インパクト説が定説であり、また数十億年スケールでは惑星同士が衝突に至る可能性もゼロではありません。BD +20°307の塵は、宇宙におけるこうしたダイナミックな現象の一瞬を捉えたと言えるでしょう。
この塵の雲は恒星からの放射圧によって、生成からわずか2000年から3000年後には消滅すると予測されています。
関連する天体
BD +20°307のように、太陽に似た恒星の周りに、恒星に近い高温の塵の円盤を持つ天体は他にいくつか知られています。周連星惑星が発見されたケプラー16なども、連星系における惑星系の進化を考える上で関連性の深い天体です。
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