BE-3

BE-3ロケットエンジン

BE-3は、アメリカの宇宙開発企業であるブルーオリジンが開発した液体燃料ロケットエンジンです。推進剤として液体水素（LH2）と液体酸素（LOX）を使用します。このエンジンは、ターボポンプを駆動するために主燃焼室から少量の燃焼ガスを抽出する「タップオフサイクル」という方式を採用しています。

開発の歴史と試験

BE-3の開発作業は2010年代初頭にスタートしました。2013年1月には、この新型液体水素/液体酸素エンジンの開発が正式に発表されます。初期の燃焼試験は、同じく2013年にNASAのステニス試験センターで実施されました。

開発初期の原型のエンジンは推力440 kN（約100,000 lbf）を目指していましたが、その後の開発と試験を経て性能が向上しました。

2013年末には、実際の弾道飛行を模倣した重要な燃焼試験が成功しました。この試験では、一度のシーケンスの中で、エンジン停止による惰性状態、出力を下げた状態、最大出力、長時間の燃焼、そして再着火といった一連の挙動が実証されました。これは、準軌道飛行ミッションにおけるエンジンの多様な運用能力を示すものです。

2013年12月以降、ブルーオリジンは地上試験の成果に基づいてエンジンの仕様を更新しました。海面高度に近い試験において、エンジンが最大出力時に490 kN（約110,000 lbf）の推力を発生させることが確認されました。さらに、将来的な特定の打ち上げ機で必要となる可能性のある、制御された垂直着陸のために、推力を110 kN（約25,000 lbf）まで下げる能力も実証されました。

2015年4月には最終的なエンジン仕様が発表されました。この時点での試験では、最大出力の20%に相当する89 kN（約20,000 lbf）という、より広範囲な推力調整が可能であることが確認されました。

開発期間中、BE-3は集中的な試験が繰り返されました。2013年12月時点ですでに、テキサス州バンホーンにあるブルーオリジンの試験施設で160回以上の始動と累計9,100秒（約152分）の運転を達成していました。2014年には、縮小版ブースターを用いた実際の弾道飛行を再現した試験も完了しています。2015年4月までに、合計450回以上、累計500分を超える燃焼試験が実施され、エンジンの信頼性が検証されました。

実用化とニューシェパード

BE-3エンジンの海面高度版であるBE-3PMは、2015年初頭に受領試験が完了し、実用段階に入りました。同年から、ブルーオリジンが開発した準軌道飛行ロケット「ニューシェパード」の推進システムとして使用されています。2015年4月29日には、BE-3PMを搭載したニューシェパードが初の飛行試験を行い、高度93.5 kmに到達しました。

派生型 BE-3U

BE-3PMの開発が完了した後、ブルーオリジンは宇宙空間での運用を想定した真空仕様の派生型エンジン「BE-3U」の開発を発表しました。BE-3Uは、原型とは異なる「エキスパンダーブリードサイクル」という方式を採用しています。これは、液体水素がエンジンノズルや燃焼室周辺の配管を流れることで熱を吸収し、そのガスでターボポンプを駆動する方式です。エンジンの形状やサイクルがBE-3PMとは異なるため、名前は同じものの実質的には別のエンジンとして扱われることもあります。

BE-3Uは、ブルーオリジンの大型ロケット「ニューグレン」の推進システムとして開発されました。ニューグレンの第2段には2基のBE-3Uが搭載されます。BE-3Uを搭載したニューグレンは、2025年1月に初打ち上げに成功し、その性能を証明しました。

過去には、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）が将来のヴァルカンロケットの第2段にBE-3の使用を検討していた時期もありましたが、その後の計画変更により実現しませんでした。

BE-3およびその派生型BE-3Uは、ブルーオリジンが開発する様々な宇宙輸送システムにおいて重要な役割を担っています。

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