BMW・8シリーズ

BMW 8シリーズ：ラグジュアリークーペの系譜

BMW 8シリーズは、BMWが手がける高級クーペおよびカブリオレモデルです。その歴史は1990年代初頭にまで遡り、現在も進化を続けています。本稿では、初代モデルから最新モデルまで、BMW 8シリーズの歴史と魅力を詳細に解説します。

初代BMW 8シリーズ（E31型）

1989年のフランクフルトモーターショーで発表された初代8シリーズ（E31型）は、BMWのフラッグシップモデルとして、その美しいデザインで高い評価を受けました。リトラクタブルヘッドライトやピラーレスハードトップ、そして当時BMW量産車としては初となるマルチリンク式リアサスペンションといった先進的な技術が採用されています。しかしながら、その高価格とV12エンジン搭載モデルに見られたコンピュータ故障などの問題から、販売面では苦戦を強いられました。日本市場においても、高価格帯でゴルフバッグが積載できないなどの点が、販売を阻む要因となりました。

日本市場では、1990年に850iが発売され、その後、840Ci、850CSiなどが追加されましたが、販売台数は全世界で3万台に留まり、1999年に生産終了となりました。ラインナップには、最高出力218psの3.0L V8エンジンを搭載したプロトタイプモデル830iや、最高出力558psの5.6L V12エンジンを搭載していたが、量産には至らなかったM8も存在しました。

主要モデル

850i: 初代の主力モデル。日本での価格は1450万円。
850CSi: BMW M社が開発した高性能モデル。アクティブ・リヤ・アクスル・キネマチックス（4輪操舵）を搭載。価格は1680万円。
840Ci: V8エンジンを搭載したモデル。価格は1170万円（1996年以降は980万円）。
840Ci Mインディビデュアル: 特別仕様車。ボディカラーや内外装に特別な仕様が施された。価格は1050万円。

第2世代BMW 8シリーズ（G14/G15/G16/F91/F92/F93型）

19年ぶりに復活した第2世代8シリーズは、2017年のコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステで公開されたコンセプトモデルをベースに、2018年に発売されました。2ドアクーペ、2ドアカブリオレ、4ドアクーペ（グランクーペ）の3つのボディタイプがラインナップされました。7シリーズ（G11型）をベースにしながらも、よりスポーティなデザインと走りを追求したモデルとして開発され、メルセデスAMG GT 4ドアクーペやポルシェ・パナメーラといった競合車種と真っ向から対決する存在感を示しました。

7シリーズと共通の「カーボン・コア」と呼ばれる炭素繊維強化プラスチック（CFRP）を多用したボディ構造を採用することで軽量化を実現。V8エンジンやV12エンジンを搭載し、強力なパワーと優れたハンドリングを両立しています。特徴的なのは、人工的に作り出された排気音で、車内のスピーカーからも疑似排気音が再生されるシステムが装備されています。インテリアは、クリスタルシフトノブなど高級感あふれる造り込みで、快適なドライブを実現しています。ただし、トランク容量は、先代の6シリーズと比較してやや小さくなっています。

2019年には高性能モデルであるM8も追加され、クーペ、カブリオレ、グランクーペの各ボディタイプが設定されました。M8は、625psという驚異的なパワーを誇る「コンペティション」モデルも存在します。

2022年にはマイナーチェンジが行われ、内外装のデザイン変更、インフォテインメントシステムの刷新、運転支援システムの充実などが行われました。また、限定モデルとしてアメリカ人アーティスト、ジェフ・クーンズとのコラボレーションモデルも登場しました。

主要モデル

M850i xDrive: V8ツインターボエンジン搭載モデル。
840i/840d: V8エンジンと直列6気筒ディーゼルエンジン搭載モデル。
M8: BMW M社がチューニングした高性能モデル。クーペ、カブリオレ、グランクーペの3ボディタイプを設定。
ALPINA B8: アルピナ社がチューニングしたモデル。8シリーズ・グランクーペをベースにしている。

8シリーズの終焉と限定車

2024年6月、BMW 8シリーズは日本市場での販売を終了しました。販売終了を記念して、「The Final Edition」という特別仕様車も発売されました。

モータースポーツ

BMW 8シリーズは、モータースポーツにおいても活躍しています。M8 GTEは、FIA 世界耐久選手権（WEC）などで活躍しています。

まとめ

BMW 8シリーズは、ラグジュアリーとスポーティさを兼ね備えた、魅力的なクーペおよびカブリオレモデルです。初代モデルから最新モデルまで、常に進化を続け、BMWのフラッグシップモデルとしての地位を確立してきました。今後、BMWがどのようなモデルを開発していくのか、引き続き注目していきましょう。

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