BOR-5

BOR-5（旧ソ連のブラン計画における試験機）

概要

BOR-5は、旧ソビエト連邦が進めたスペースシャトル計画、通称「ブラン計画」のために開発された無人の飛行試験機です。ブランの実機を8分の1スケールに縮小したモデルであり、本計画において重要な役割を担いました。その目的は、ブランが大気圏に再突入する際に直面するであろう、極超音速域での空力特性、機体にかかる熱・音波の影響、そして飛行中の安定性を実証することにありました。

開発と運用

ブラン実機の開発に先行して、BOR-5は1980年代に合計5回の試験飛行を実施しました。これらの打ち上げは、カプースチン・ヤール射場からK65M-RB5ロケットを用いて行われ、機体は弾道軌道に乗せられました。各飛行試験では、再突入環境を再現し、機体の挙動や搭載されたセンサー類による各種データの収集が行われました。BOR-5シリーズの試験によって得られたデータは、ブラン本機の空力設計や熱防御システム、姿勢制御システムの開発に不可欠な情報を提供しました。

記録されている試験飛行は以下の通りです。

モデル 501: 1984年6月5日
モデル 502: 1985年4月17日
モデル 503: 1986年12月27日
モデル 504: 1984年8月27日
* モデル 505: 1988年6月27日

BOR-5は、他のBORシリーズ試験機、例えばBOR-4が必ずしもブラン実機の正確なスケールモデルではなかったのに対し、ブランの形状と空力特性を忠実に再現したモデルとして設計されました。このスケールモデルによる試験は、比較的小規模な打ち上げシステムで、実機に近い空力および熱力学的環境下でのデータを効率的に収集するための手法でした。

現在の状況

BOR-5の試験機は、その歴史的価値から現在も一部が現存しています。ロシアのモニノ空軍博物館には、BOR-5の機体が常設展示されており、ソ連時代の宇宙開発遺産として一般に公開されています。

また、冷戦終結後に民間に払い下げられた機体も存在します。近年、アメリカ合衆国のフロリダ州において、BOR-5の一機が市場に出回り、155,000米ドルという価格で売却されたことが報じられました。これは、歴史的な宇宙開発機材に対するコレクターや研究機関の関心を示す事例と言えます。

BOR-5による試験プログラムは、短い期間ではありましたが、ブラン計画における技術的なリスクを低減し、実機開発を前進させる上で重要な貢献を果たしました。本機は、旧ソ連の高度な航空宇宙工学能力を示す証の一つであり、ブラン計画史における重要な一頁を飾る存在です。

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