BT-12 (航空機)

フリートウイングス BT-12：戦争準備とステンレス鋼の練習機

第二次世界大戦の勃発を受け、アメリカ陸軍航空隊（後のアメリカ陸軍航空軍）は、急増するパイロットの養成に適した練習機の必要性に迫られました。その需要に応えるべく、ステンレス鋼の製造を主とするフリートウイングス社が、新型の基本練習機開発に乗り出しました。これが、フリートウイングス BT-12（Fleetwings BT-12 Sophomore、社内名称：モデル 23）です。

開発と設計

1939年、フリートウイングス社は試作機XBT-12の開発に着手しました。設計は、プラット・アンド・ホイットニー R-985-AN-1 ワスプ・ジュニアエンジンを搭載した、全金属製の単葉機。片持ち式低翼に固定式尾輪という構成が採用され、教官と生徒は一体型のキャノピー内でタンデムに搭乗する設計となっていました。特に注目すべきは、機体の主要構造材に溶接ステンレス鋼を用いた点です。これは、当時としては革新的な試みでした。

運用と生産数の少なさ

1939年末から始まった評価試験の後、BT-12として量産化され、当初は176機の製造が計画されました。しかし、同時期に開発が進められていたヴァルティー BT-13が陸軍航空隊の評価でより高い評価を得たため、BT-12の生産は縮小を余儀なくされます。結果として、1942年から1943年にかけて製造された機体はわずか24機にとどまりました。当初計画されていた176機という数字とはかけ離れた、非常に少ない生産数に終わっています。これは、当時のアメリカ軍の航空機調達における競争の激しさと、優先順位の変遷を如実に物語っています。

機体スペックと特徴

BT-12の機体スペックは以下の通りです。全金属製の機体構造、ステンレス鋼の使用といった特徴は、当時の航空機製造技術において先進的な試みと言えるでしょう。一方で、生産数の少なさから、その実力は十分に発揮されることなく、歴史の片隅に埋もれていくことになります。

諸元 (BT-12)

乗員: 2名
全長: 8.89 m
全高: 3.45 m
翼幅: 12 m
翼面積: 22.33 m²
空虚重量: 1,439 kg
運用時重量: 2,040 kg
エンジン: プラット・アンド・ホイットニー R-985-AN-1 ワスプ・ジュニア 空冷 星形エンジン (出力 450 hp)
最大速度: 314 km/h
巡航速度: 241 km/h
航続距離: 1,086 km
実用上昇限度: 7,254 m
上昇率: 10,000フィートまで10分

派生型

XBT-12: 試作機。1機製造。
* BT-12: 量産型。24機製造。当初計画は176機だったが、キャンセルされた。

結論

フリートウイングス BT-12は、戦争準備の急務の中で生まれた、ステンレス鋼製の革新的練習機でした。しかし、その実力は十分に発揮されることなく、わずかな数の機体が製造されたのみで、歴史の表舞台から姿を消しました。この機体の存在は、当時のアメリカの航空機開発と調達における状況、そして技術革新と市場のニーズのバランスの難しさなどを示唆する事例となっています。 BT-12の短い歴史は、開発競争の激しさ、そして軍需産業における戦略的判断の重要性を改めて認識させてくれるでしょう。 わずか24機の製造数という事実は、この機体の希少性と、航空史における特異な存在感を示しています。

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