BYGレコード

BYGレコード：フランス発、フリー・ジャズの先駆的レーベル

BYGレコードは、1967年にフランスで設立されたレコードレーベルです。特に、フリー・ジャズに焦点を当てた「アクチュエル（Actuel）」シリーズでその名を知られています。しかし、その活動はジャズだけにとどまらず、ムジカ・エレットロニカ・ヴィヴァ、フリーダム、ゴングといったアーティストの作品もリリースし、幅広い音楽性を示しました。

設立の背景と初期の活動

BYGレコードは、ジャン・ゲオルガカラコス、ジャン＝リュック・ヤング、フェルナンド・ボルソの3人によって設立されました。レーベル名は、彼らの名前の頭文字から取られています。ゲオルガカラコスはレコードの配給業者および輸入業者として、ヤングはバークレー・レコードで、ボルソはピエール・バルーが設立したサラヴァというレコードレーベルでそれぞれ経験を積んでいました。

アメリカのフリー・ジャズ・ミュージシャンとの邂逅

BYGレコードは、アメリカのフリー・ジャズ・ミュージシャンを積極的にパリに招待し、1969年の夏には集中的なレコーディングを行いました。当時、アメリカ国内では十分な支援や注目を集められずにいたミュージシャンにとって、BYGレコードの存在は非常に大きな意味を持っていました。また、1969年7月にアルジェで開催されたパン＝アフリカン音楽祭への出演も、彼らがヨーロッパへ渡るきっかけとなりました。ジャズ写真家のジャック・ビスセリアがレーベルとミュージシャンを結びつける役割を担い、彼の功績から「BYG」の「B」はビスセリアを指すと誤解されることもありました。この時期にレコーディングされたアルバムは、フリー・ジャズの貴重な記録として高く評価されています。

アクチュエル・フェスティバルとその後

BYGアクチュエルは、1969年10月下旬にベルギーのアムージーで開催されたアクチュエル・フェスティバルの主催も担当しました。当初はパリでの開催を目指していましたが、フランス当局の許可が得られず、ベルギーでの開催となりました。このフェスティバルには、フランク・ザッパ、ピンク・フロイド、キャプテン・ビーフハート、ソフト・マシーン、テン・イヤーズ・アフター、イエス、ナイスといった、当時のプログレッシブ・ロックを代表するアーティストが多数出演し、5日間で約2万人の観客を動員する成功を収めました。しかし、経済的には失敗に終わりました。その後、1970年7月にはゲオルガカラコスがフレンチ・リヴィエラでポッパナリア・フェスティバルを開催しましたが、これもまた経済的な成功には繋がりませんでした。1972年頃には、財政問題が深刻化し、BYGレコードは事実上活動を停止しました。その後、ゲオルガカラコスとヤングは、それぞれセルロイド、チャーリーという独自のレコードレーベルを設立しました。

再評価とコンピレーション・アルバム

2002年には、BYGレコードの音源をまとめたコンピレーション・アルバム『JazzActuel: a collection of avant garde/free jazz/psychedelia from the BYG/Actuel catalogue of 1969–1971』が、チャーリー（3枚組CD）とイタリアのGet Backレコード（6枚組LP）からリリースされました。このコレクションは、ソニック・ユースのサーストン・ムーアとジャーナリストのバイロン・コーリーによってキュレーションされ、BYGレコードの音楽が再評価されるきっかけとなりました。

BYGレコードは、短期間の活動ではありましたが、フリー・ジャズの発展に大きく貢献し、多くの重要なミュージシャンの作品を世に送り出しました。その音楽は、今もなお多くの音楽ファンに愛され続けています。

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