Brazil R/S

Brazil Rendering Systemは、かつて3D Studio Max、Autodesk VIZ、Rhinoceros 3Dといった主要な3DCGソフトウェアで利用可能だった、プロプライエタリな商用プラグインでした。このプラグインは、Steve BlackmonとScott Kirvanによって、Blur StudioのR&Dチーム在籍中に開発が開始されました。その後、彼らはSplutterFishという会社を設立し、Brazil R/Sの販売とマーケティングを行いました。

Brazil R/Sの最大の特徴は、高速なレイトレーシングとグローバルイルミネーションを駆使した、写実的なレンダリング能力です。これにより、3DCGアーティストは、印刷物、オンラインコンテンツ、放送ソリューション、そして長編映画など、幅広い分野で高品質なビジュアルを作成することが可能になりました。特に映画業界では、「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」、「シン・シティ」、「スーパーマン リターンズ」、「Mr.インクレディブル」といった著名な作品で採用され、その実力が広く認知されました。

しかし、Brazil R/Sは、開発企業の変遷とともに、その歴史に幕を閉じることになります。2008年、SplutterfishはCaustic Graphicsに買収され、さらに2010年12月には、Caustic GraphicsがImagination Technologiesに買収されました。そして、Imagination Technologiesは、2012年5月14日に、Brazilの製品としてのサポートを事実上終了（End-of-life）すると発表しました。

Brazil 3.0は、この製品ラインの進化形として登場しました。当初、OpenRLベースのレンダリングエンジンとして発表されましたが、後にBrazil 3.0 SDKは、PowerVR Brazil SDK 1.0へと改名されました。このSDKは、レイトレアクセラレータであるCaustic Series2 R2100/R2500に対応しており、より高速なレンダリングを可能にしました。

このSDKは、Caustic Visualizer（MayaおよびSketchUp用のリアルタイムレンダリングプラグイン）とNeon（Rhinoceros 3D用のビューポートレンダリングプラグイン）で利用されました。しかし、Caustic Visualizer for MayaとR2100/R2500アクセラレータは2014年6月13日に、Caustic Visualizer for SketchUpは2015年3月23日に、それぞれEnd-of-lifeを迎え、サポートが終了しました。

さらに、Imagination Technologiesは2015年に、汎用GPUを搭載した新しいレイトレアクセラレータであるPowerVR Wizardをリリースしましたが、以前のOpenRLベースの技術はOpenGL ESベースのベンダー固有の新しいレイトレAPIに置き換えられました。また、Imagination Technologiesは新しいレイトレレンダラーとしてResinを開発しましたが、その外部提供については現在未定です。

このように、Brazil Rendering Systemは、技術的な進化と企業の変遷を経て、その役割を終えることになりました。しかし、その高いレンダリング能力と、多くの著名な作品で採用された実績は、3DCG業界において、一つの大きな足跡を残しました。

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