Buy a suit スーツを買う

『buy a suit スーツを買う』は、2008年に亡くなった市川準監督の遺作となった中編作品です。2009年4月11日に劇場公開され、同時上映は同監督の『TOKYOレンダリング詞集』でした。

ストーリー

大阪から上京したユキは、秋葉原で同僚のスミちゃんと別れ、蒸発中の兄・ヒサシの大学時代の先輩である山口を訪ねます。ユキが上京したのは、消息不明だった兄から突然ハガキが届き、そこに記された住所を訪ねるためでした。山口はヒサシの思い出を語り、彼宛に手紙を書いてユキに託します。

ハガキを頼りに住所を探すユキは、吾妻橋のたもとにたどり着きます。そこで彼女が見つけたのは、ホームレスとなった兄のヒサシでした。数学の才能に恵まれ過ぎたヒサシは、社会に適応できずにホームレス生活を送っていたのです。隅田川を眺めながら、兄妹は静かに語り合います。

その後、二人はヒサシの元妻であるトモ子に会うため、浅草へと向かいます。煮込み通りで再会した三人は、山口からの手紙を読みます。トモ子の言葉に何かを感じたユキは、店を出た後、ヒサシにスーツを買ってあげると申し出ます。洋品店の店先でスーツを選ぶ二人でしたが、その傍らでトモ子は静かに佇んでいました。

キャスト

ユキ（川原ゆき）：砂原由起子
ヒサシ（川原久）：鯖吉
山口（山口隆志）：山崎隆明
トモ子：三枝桃子
スミちゃん：松村寿美子

インタビュアー：佐藤慎一
カメラクルー：柏木慎一
ある男：宍戸貴義

※ 鯖吉と砂原由起子は実の兄妹です。

スタッフ

監督・脚本：市川準
助監督：末永智也
制作：宍戸貴義
衣装：宮本まさ江
音楽：松本龍之介
整音：橋本泰夫
音響効果：佐々木敦生

受賞歴

第21回東京国際映画祭「日本映画ある視点」部門作品賞


市川準監督ならではの繊細な演出と、キャストの自然な演技が光る作品です。兄妹の再会を通して、現代社会における家族のあり方や、人生の難しさ、そして温かさを感じさせてくれます。

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