C-5 (航空機・日本)

C-5 高速通信機

C-5は、朝日新聞社が使用した高速通信機であり、川崎造船所飛行機工場（後の川崎航空機工業）によって製造されました。

概要

1933年6月、朝日新聞社は川崎に対し、航続力、速力、機体強度、運用性に優れた近代的な通信機を発注しました。これを受けて川崎は、リヒャルト・フォークト博士の指導のもと、内藤繁樹技師を設計主務者として開発を開始しました。1934年3月5日に予定されていた満州国建国祭の取材原稿輸送に使用することが決定されたため、開発は迅速に進められ、1934年2月上旬に完成しました。

試験飛行後、朝日新聞社に納入されたC-5は、同社の第110号機となりました。満州国建国祭の原稿を搭載し、新京飛行場から大阪へ向けて飛び立ちましたが、燃料内のベンゾール液の氷結によるエンジン不調が発生し、新京郊外に不時着しました。損傷は軽微にとどまりましたが、原稿の輸送は社有の機体に委ねられることとなりました。その後も、C-5は連絡飛行に用いられ、1934年9月30日には北平 - 大阪 - 東京間2,625 kmを9時間34分で飛行するなど、通信機として数々の長距離飛行を成功させました。

機体は密閉式風防を持つ低翼単葉の全金属製という当時としては近代的なもので、同時期に開発されたキ5戦闘機の拡大型でした。降着装置は固定脚で、主脚は流線型のスパッツで覆われていました。座席はタンデム複座で、前席と後席の間には予備座席または荷物用のスペースが設けられていました。速力と航続力は、製造当時の日本の民間機の中で最大であり、特に最大速度は九二式戦闘機と同等でした。

日本陸軍がC-5を高速偵察機に転用することを検討したこともありましたが、実現には至りませんでした。

諸元

全長：9.13 m
全幅：13.42 m
全高：2.60 m
主翼面積：30.0 m2
自重：1,619 kg
全備重量：2,723 kg
エンジン：川崎 BMW-8 液冷V型12気筒（離昇800 hp） × 1
最大速度：335 km/h
巡航速度：250 km/h
実用上昇限度：7,000 m
航続距離：2,000 km
乗員：2 - 3名

参考文献

野沢正『日本航空機総集 川崎篇』出版協同社、1960年、39 - 41,96 - 98頁。
小川利彦『日本航空機大図鑑 1910年ー1945年 中巻』国書刊行会、1993年、98,99頁。ISBN 978-4-336-03346-8。
土井武夫『飛行機設計50年の回想』酣燈社、1989年、108,109頁。ISBN 978-4-87357-014-3。

関連項目

日本製航空機の一覧

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