CBHD

CBHD（China Blue High Definition）とは

CBHD（China Blue High Definition）は、2007年に中国の清華大学光メモリ国家工程研究センター（OMNERC）によって発表された光ディスク規格です。当初はCH-DVD（China High Definition DVD）と呼ばれていましたが、後にCBHDに改称されました。この規格は、CDやDVDの後継として、ハイビジョン映像に対応することを目指して開発されました。

規格の概要

CBHDは、直径12cm、厚さ1.2mmのポリカーボネート製のディスクを使用します。これはCDやDVDと同じ物理サイズですが、読み取りには波長405nmの青紫色レーザーを使用しており、より高密度な記録が可能です。これにより、大容量のデータ保存を可能にしています。基本的な物理仕様はHD DVDに準拠しており、その派生規格と言えます。

CBHDの特徴として、変調方式やビデオ圧縮、コピープロテクションなどがHD DVDとは異なります。これにより、海外の特許使用料を削減し、中国独自の著作権保護を強化しようとしています。コピープロテクションには、独自のDKAA（Digital Knowledge Asset Alliance）システムに加え、HD DVDやBlu-ray Discで使用されているAACS（Advanced Access Content System）も採用されています。

規格策定の経緯

CBHDの策定には、東芝の技術供与やHD DVDの開発に携わった技術者の協力がありました。当初、規格策定はCHDA（China High-Definition DVD Industry Association）が行っていましたが、中国独自の赤色レーザーディスク規格であるNVDが登場したため、政府主導で両団体を統合し、CHDIAが設立されました。現在、CBHDのライセンスはBOC（Beijing Optical Consulting Co., Ltd）が管理しています。

市場への展開

2009年5月にはCBHD対応プレイヤーの出荷が始まり、同年10月には海外進出も報じられました。しかし、TCL製のプレイヤーは、東芝のHD DVDプレイヤーを転用したものであることが指摘されています。実際には、CBHDは市場に広く普及することはなく、ワーナー・ブラザーズなどの一部映画会社が細々と映画ソフトを発売する程度にとどまりました。

CBHDメディアの種類

CBHDのメディアは、読み取り専用のROMのみで、書き込み可能なR、RW、RAMといったメディアは存在しません。ディスクは単層15GBと2層30GBの容量があり、中国国内タイトルは単層、ワーナータイトルは2層が多い傾向にありました。ワーナー・ブラザーズは、「ハリー・ポッター」シリーズなどのタイトルを提供していました。

製造は、日本のメモリーテック株式会社の合弁会社である上海聯合光盤有限公司（UOD）が担当しました。2010年以降は、中国現地のメーカーが参入し、さらなる低価格化が予定されていました。

CBHDの技術仕様

CBHD-ROM: 読み取り専用のCBHD規格。12cm片面1層15GB / 片面2層30GB（記録型は未策定）
ビデオフォーマット: 市販ビデオソフト収録用のCBHD-Video規格で、HD DVD-Video規格をベースに、中国独自のAVSコーデックを採用。
映像コーデック: AVS-Video、VC-1、MPEG-4 AVCハイプロファイル。
音声コーデック: AVSオーディオ、ドルビーデジタル（AC-3）、L-PCM。
インタラクティブ機能: HD DVDのHDiのような対話型操作機能は削除。
著作権保護機構: DKAAにより不正コピーを防止。AACSも併用。
リージョンコード: リージョンコードによる制御は行われていません。

経緯と関連企業

CBHDの普及には、液晶に強みを持つTCLや、デジタル機器メーカーの新科電子がプレイヤーを発売し、ワーナー・ブラザーズと中国唱片総公司がコンテンツを提供しました。

主な出来事

2007年2月：DVDフォーラムからC-HD DVD-ROM Part 1が発行
2007年9月：OMNERCによりCBHDの物理規格がCHDAに示される
2008年1月：DVDフォーラムからC-HD DVD-ROM Part 2およびPart 3が発行
2008年10月：AACS LAがCBHDでの暗号キー使用を認可
2009年1月：NVD販売開始
2009年2月：ワーナーブラザーズがCBHD支持を表明
2009年5月：新科電子とTCLがプレイヤーとコンテンツの販売開始
2009年9月：ユニバーサルとナショナルジオグラフィックがCBHD支持を表明
2009年12月：新科電子がプレーヤーラインナップを強化

主な支持企業（中国企業以外）

ハードウェア・ソフトウェア関連企業: メモリーテック、NECエレクトロニクス
エンタテインメント関連企業: ユニバーサル・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース、ナショナルジオグラフィック

まとめ

CBHDは、中国独自の技術と市場を目指した光ディスク規格でしたが、国際的な競争の中で普及することはありませんでした。しかし、その技術的な特徴や規格策定の経緯は、光ディスク技術の歴史において重要な一例として捉えることができます。