CDS (イギリス海軍)

総合表示装置（Comprehensive Display System）について

総合表示装置（CDS）は、イギリス海軍によって開発された戦術情報処理装置であり、1940年代後半から1950年代にかけて、レーダー技術の向上と情報処理の自動化を目的として設計されました。第二次世界大戦後、レーダーは多くの目標を同時に探知できる一方で、人間のオペレーターがその情報を扱うには限界があり、特に多くの目標情報が一度に送られると、指揮官の負担が著しく増加しました。これはイギリス海軍にとっての大きな課題となり、1948年のシミュレーションでは、熟練のオペレーターでも処理可能な目標数が12機程度であることが明らかになりました。このような状況に対応するため、海軍はエリオット・ブラザーズに対して、アナログコンピュータを使用した新しい戦術情報処理装置の開発を依頼し、CDSが誕生しました。

CDSの機能と特徴

CDSの中核部分は、目標の座標を電圧で記憶するアナログ式の追尾チャネルで構成されています。これにより、レーダーのPPI（Plan Position Indicator）画面上の目標を示す輝点にカーソルを合わせることで、その目標の座標電圧が設定されます。このカーソルはサーボ機構に連動し、各追尾チャネルは固有のポテンショメータを持っています。システムは敵味方の識別情報や、高度（高高度、中高度、低高度の3パターン）も記録することができ、最大で96個の目標情報を同時に処理することが可能でした。

1957年、空母「ヴィクトリアス」において、CDSが搭載され、運用試験が行われました。この試験では、目標情報の移管において一定の手動操作が必要ではありましたが、完全手動による処理に比べて、目標情報の表示や管理が大幅に向上したとの評価を受けました。その結果、「ハーミーズ」やカウンティ級駆逐艦の初期建造艦にもCDSが適用されることとなりました。さらには、デジタル式の戦術データ・リンクであるDPT（Digital Plot Transmitter）も同時に導入されました。

アメリカ海軍との関係

アメリカ海軍もCDSに関心を持ち、一部を調査研究所に設置して性能試験を行いました。試験の結果、CDSの機能はある程度の評価を受けましたが、艦 onboard 運用に関しては要求される規模が大きすぎるという判断から、そのままの形では導入されませんでした。しかし、CDSを参考にした新たなシステムEDS（Electronic Data System）が開発され、一部の艦に搭載され運用されました。加えて、イギリス海軍もデジタルコンピュータの導入を進め、1950年代中頃からはADA（Action Data Automation）の開発を開始、1964年には空母「イーグル」にて装備化を果たしました。

結論

総合表示装置は、イギリス海軍の戦術情報処理の進化に大きな役割を果たし、目標の情報処理を効率化することで、艦の運用能力を向上させました。CDSは、その後のデジタルコンピュータや情報システムの発展に繋がる重要なステップとなり、海軍戦術の高度化に寄与したと言えるでしょう。

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