カウンティ級駆逐艦

カウンティ級駆逐艦：イギリス海軍初のミサイル駆逐艦

カウンティ級駆逐艦は、イギリス海軍が初めて導入したミサイル駆逐艦であり、その設計は、第二次世界大戦後の海軍戦略の変化に対応するために行われました。この艦級は、1955年度から1964年度にかけて、初期型（バッチ1）4隻と後期型（バッチ2）4隻の計8隻が建造されました。当時、アメリカ海軍の船体番号分類ではミサイル・フリゲート（DLG）に分類され、ジェーン海軍年鑑では軽巡洋艦として扱われるなど、その規模と能力は注目を集めました。

開発の背景

第二次世界大戦終結直後のイギリス海軍は、大西洋での船団護衛を重視し、フリゲートの建造を優先していました。しかし、将来の駆逐艦の必要性は認識されており、様々な設計案が検討されました。初期には艦隊航空管制護衛艦や対潜護衛艦、巡洋艦駆逐艦などが検討されましたが、最終的には汎用性の高い艦隊駆逐艦の必要性が高まりました。

1954年、イギリス海軍は戦略を転換し、第三世界での限定戦争に対応するため、空母機動部隊の充実を重視するようになりました。この状況下で、艦隊駆逐艦の更新は急務となり、新開発のシースラグ艦対空ミサイルの搭載が決定しました。当初、ミサイルの大型さから巡洋艦規模の艦が必要とされていましたが、妥協案として既存の駆逐艦設計をベースにミサイル搭載艦を開発することになりました。これがカウンティ級の始まりです。

設計の特徴

カウンティ級の船体は、艦内容積を確保するために長船首楼型を採用し、上部構造物も長大になりました。上甲板は強度甲板とされ、戦闘指揮所は防御のため01甲板の下に配置されました。上部構造にはアルミニウム合金が多用され、軽量化が図られました。また、特徴的な太く低い2本の煙突が設けられました。

艦内居住性も向上し、冷暖房完備の空気調整室が設置され、兵員室には寝台とロッカーが設けられました。舷窓は廃止され、照明と通風装置が改善されました。さらに、旗艦としての運用も想定し、提督や幕僚のための居住区画も設けられました。

機関

カウンティ級は、当時としては画期的なCOSAG（Combined Steam and Gas turbine）機関を採用しました。蒸気タービンに加えてガスタービンエンジンを併用することで、高い加速性能を実現しました。ボイラーはバブコック・アンド・ウィルコックス式水管ボイラー、ガスタービンエンジンはメトロヴィックG6が採用されました。

電子機器の強化に伴い電力需要が増大したため、蒸気タービンとガスタービンによる主発電機が複数搭載されました。ただし、ガスタービン主発電機は熱帯での出力低下が問題となり、後にディーゼル発電機に換装されました。

電子機器とC4ISR

空母機動部隊の防空中枢艦として、カウンティ級には高度なC4ISRシステムが搭載されました。初期型（バッチ1）では、CDS戦術情報処理装置とDPT戦術データ・リンク装置が装備されました。後期型（バッチ2）では、ADAWS-1（DAB）戦術情報処理装置が搭載され、対潜戦情報処理のためにJYC状況表示装置も併載されました。これらの装置は、同時期のアメリカ海軍のNTDSとは異なり、武器管制機能も統合していました。

レーダーは、早期警戒用の965型、目標捕捉用の992型、精密対水上捜索用の978型が搭載されました。後期型では、早期警戒レーダーが965P/M型に、目標捕捉レーダーが992Q型に更新されました。当初は3次元レーダーの搭載も検討されましたが、技術的な問題から断念され、高角測定用の278型レーダーが搭載されました。

ソナーは新型の177型ソナーが搭載され、後に184型に更新されました。可変深度ソナーの搭載も検討されましたが、実現には至りませんでした。

武器システム

カウンティ級の中核となる兵装は、シースラグGWS.1艦隊防空ミサイルでした。連装発射機は艦尾甲板に設置され、射撃指揮用の901型レーダーが上部構造物後端部に配置されました。後期型では、シースラグMk.2に更新され、システム区分もGWS.2に変更されました。発射機直前の船首楼にはミサイル弾庫区画が設けられ、核弾頭を搭載したシースラグの専用装填区画も設けられました。

艦砲は45口径11.4cm連装砲が搭載され、砲射撃指揮装置はMRS-3が採用されました。対艦ミサイルとしては、当初ブルースラグが予定されましたが、開発中止となり、後にエグゾセMM38が搭載されました。近距離防空用にはシーキャットGWS.21が搭載され、後期型では改良型のシーキャットGWS.22が搭載されました。

対潜兵器としては、ウェセックス哨戒ヘリコプターが搭載され、当初搭載が検討されていたリンボー対潜迫撃砲やMk.20「ビダー」対潜誘導魚雷は採用されませんでした。

運用と退役

カウンティ級は、1975年から42型駆逐艦の就役開始に伴い、1978年から順次退役が始まりました。フォークランド紛争では、バッチ2の「グラモーガン」と「アントリム」が出撃しましたが、1987年までに全艦がイギリス海軍から退役しました。退役後、一部はパキスタン海軍とチリ海軍に譲渡されました。チリ海軍では、1990年代に近代化改修を受け、ミサイル駆逐艦から汎用駆逐艦に転換し、運用を続けました。

まとめ

カウンティ級駆逐艦は、イギリス海軍のミサイル駆逐艦の先駆けとして、その後の艦艇設計に大きな影響を与えました。革新的な技術と強力な武装を兼ね備え、冷戦期の海軍戦略において重要な役割を果たしました。しかし、技術の進歩と戦略の変化に伴い、退役を余儀なくされ、その役目を終えました。

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