CENP-H

CENP-H

CENP-H（セントロメア・プロテインH）は、ヒトにおいては`CENPH`遺伝子の指令に基づいて合成されるタンパク質です。このタンパク質は、細胞が分裂する際に染色体を正確に娘細胞へ分配するために極めて重要な役割を担っています。

機能

細胞分裂の過程で、染色体はセントロメアと呼ばれる特定の領域を中心に結合し、紡錘体微小管によって引っ張られて分離します。このセントロメアに形成されるキネトコアと呼ばれる巨大なタンパク質複合体は、染色体と紡錘体微小管をつなぐ役割を果たしており、セントロメアの構造維持、キネトコア自体の組み立て、そして姉妹染色分体（複製された同一の染色体）の正確な分離に不可欠です。

CENP-Hタンパク質は、このキネトコアの「インナーキネトコアプレート」と呼ばれる内側の層を構成する主要な成分の一つです。CENP-Hは、インナーキネトコアプレートに常に存在しており、細胞周期を通じてキネトコアの他の主要な構成成分であるCENP-AやCENP-Cといったタンパク質と同じ場所に認められます。

特に、CENP-HはCENP-Cがセントロメアへと正確に配置されるために必須の働きをします。一方で、CENP-Aのセントロメアへの配置そのものには直接必要ではないとされています。しかしながら、CENP-Aと他のタンパク質からなるCENP-H-I複合体との相互作用を通じて、新しく合成されたCENP-Aがセントロメアへ組み込まれる過程に関わっている可能性も示唆されています。

細胞内の局在に関して、CENP-Hはインナーキネトコアプレートへの恒常的な局在に加えて、セントロメアのヘテロクロマチン領域の外側、すなわちCENP-Bが存在する領域や、細胞が前中期にあるときにCENP-Eが局在するキネトコアコロナと呼ばれる領域の内側にも見出されます。CENP-Hが複数の分子で形成するマルチマー（多量体）構造は、活発に機能しているセントロメア-キネトコア複合体が適切に組織化され、その働きを維持するために非常に重要な役割を果たしています。

CENP-Hタンパク質自身は、他のタンパク質との結合に関わるコイルドコイル構造や、細胞核内に移動するための核局在シグナルといった構造的な特徴を持っています。

興味深いことに、いくつかの研究ではCENP-Hがヒトの特定種のがんの発生や進行と関連している可能性が報告されています。

また、ヒトだけでなく、他の生物種でもCENP-Hに類似したタンパク質が見つかっています。例えば、分裂酵母（Schizosaccharomyces pombe）のキネトコアタンパク質であるFta3は、CENP-Hと配列上の類似性を示します。分裂酵母のFta3は、Sim4複合体という別の複合体のサブユニットであり、この複合体はDad1というタンパク質との相互作用を介してDASH複合体と呼ばれる構造をキネトコアへ運び込むために必要とされています。分裂酵母のFta2, Fta3, Fta4といったタンパク質群は、分裂酵母のセントロメア内の`cnt`領域や`imr`領域と呼ばれる部分に結合することが知られています。

その他のタンパク質との相互作用

CENP-Hは、KIAA0090と呼ばれるタンパク質とも相互作用することが報告されています。しかしながら、この相互作用が細胞内でどのような意味を持つのか、その重要性については現時点ではまだ明らかになっていません。

CENP-Hは、細胞分裂の精度を保証する上で中心的な役割を果たすキネトコア複合体の重要な構成要素として、他のセントロメア・キネトコアタンパク質と密接に連携して機能しています。その詳細なメカニズムの解明は、細胞分裂の基礎理解だけでなく、がんのような疾患の病態解明にも繋がる可能性があります。

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出典・関連情報

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（※本記事は提供された情報を基に作成されており、網羅的な情報や最新の研究成果を全て含んでいるわけではありません。）

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