分裂酵母

分裂酵母の概要

分裂酵母（ぶんれつこうぼ）は、シゾサッカロミケス属(Schizosaccharomyces)に分類される酵母の一群であり、その主な特徴は二分裂によって増殖することです。この酵母は、主に細胞生物学の研究において、細胞周期や遺伝学の理解を進めるためのモデル生物として重要視されています。分裂酵母の学名に含まれる「Schizo-」は「分裂」を意味し、その名の通り、特異な増殖プロセスを持っています。

系統と特徴

分裂酵母は約4.5億年から5億年前に出芽酵母とは異なる系統に進化したと考えられています。これにより、分裂酵母と動物との系統的な違いは非常に大きいとされています。この系統の違いは、進化の過程で生じた様々な形態的、機能的な変化を反映しています。

分類

分裂酵母は、2010年時点で以下の4種に分類されています：

• - S. cryophilus
• - S. japonicus (シノニム: Hasegawaea japonicus)
• - S. octosporus (シノニム: Octosporomyces octosporus)
• - S. pombe

特に、S. pombeは1893年にP. Lindnerによって東アフリカのミレットビールから単離された最初の分裂酵母です。「pombe」という名前はスワヒリ語で、雑穀から作られた伝統的なビールを指します。

生態と形態

分裂酵母は通常、一倍体として生活し、外部環境に応じて接合、減数分裂、あるいは胞子形成を行います。この酵母の倍化時間（doubling time）は約3時間です。細胞の形状は筒状であり、一倍体の長さは約13μm、直径は約3μmです。二倍体細胞はそれぞれ長さ22μm、直径4μm程度です。これらの細胞の中心には核が存在し、DNA染色を行うことで、独特の三日月型の核小体が確認されることがあります。これは細胞周期の特定の状態を判別するための指標となります。

遺伝情報と研究への意義

分裂酵母は三本の染色体を持ち、第一染色体のサイズは5.58 Mb、第二は4.54 Mb、第三は2.45 Mbです。常染色体とは別に、ミトコンドリアDNAも存在し、そのサイズは0.02 Mbです。この酵母の全ゲノム配列が2002年に解読されたことにより、このモデル生物は真核生物の研究における重要な資源となりました。特に、約40％の遺伝子がイントロンを有しており、アミノ酸配列のヒトとの類似度が出芽酵母よりも高いため、出芽酵母よりもヒトに近いモデル生物とみなされることもあります。

このように、分裂酵母はそのユニークな特性から、細胞周期の理解や遺伝学の進展に寄与しており、今後も研究の重要な対象となることでしょう。

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