COME ALONG

山下達郎『COME ALONG』：販売促進用から伝説のアルバムへ

1980年3月21日にリリースされた山下達郎の『COME ALONG』は、単なるコンピレーションアルバムではありません。その誕生秘話、幾多のリリース形態、そして音楽的な魅力を紐解いていきましょう。

誕生秘話：店頭演奏用アルバムから人気アルバムへ

『COME ALONG』の始まりは、1979年夏。レコード店での店頭演奏を目的とした、販売促進用のアナログLPでした。企画はレコード会社RVC（当時）の担当者によるもので、山下達郎自身によるものではありませんでした。1976年から1978年にかけて発表されたアルバム『CIRCUS TOWN』『SPACY』『GO AHEAD!』からの選曲に加え、最新シングル「愛を描いて -LET'S KISS THE SUN-」が収録されています。

A面はディスコ風の「Dancing Side」、B面はハワイのラジオ局を模した「KIKI Station Side」という構成で、小林克也がDJを担当。さらに、当時まだ交際中の竹内まりやが英語で協力し、曲間にDJのトークや短いジングルが挿入される、独特の構成となっています。これらのジングルには、山下のFM番組用アカペラや、竹内まりやのヒット曲のアレンジバージョンなどが使用されました。

当初はプロモーション用として制作された『COME ALONG』でしたが、店頭で流されたことで予想外の反響を呼びました。特に関西地区では人気が高まり、プレミア価格が付くほどになりました。これを受けて、レコード店やリスナーからの正式発売の要望が殺到し、RVCは山下達郎に発売を打診。当初は発売に抵抗があった山下達郎でしたが、カセットテープのみという条件で、正式に発売されることとなりました。その際、収録曲「ついておいで」の英題「FOLLOW ME ALONG」と『Come Fly with Me!!』を組み合わせ、『COME ALONG』というタイトルが付けられました。

幾多のリリース形態：カセットテープからCD、そしてリマスター盤へ

1980年のカセットテープ発売後、『COME ALONG』は、山下の移籍後、1984年にLPとカセットで再発売されました。その後、2002年には、RCA/AIR時代のカタログのリマスター再発に伴い、CD化。これは、販促用として急いで制作されたため音質面で問題があったものの、多くのリスナーにとって思い出深い作品であることから、応募者全員への特典として非売品で配布されました。

そして2017年、さらに『COME ALONG 3』の発売を機に、山下達郎自身によるマスタリングを施したリマスタリング盤として再発売され、デジタル技術を用いて音質も改善されました。ジャケットイラストは、非公認盤LP、CDと同じ鈴木英人によるものを使用しています。

音楽性と魅力：多様な楽曲と独特の構成

『COME ALONG』には、山下の初期の代表曲が収録されており、彼の幅広い音楽性を垣間見ることができます。アップテンポな楽曲から、メロウなバラードまで、多彩な魅力にあふれています。また、DJのトークやジングルが挿入された構成は、当時としては斬新で、リスナーを当時の時代へとタイムスリップさせるような感覚を与えてくれます。

結論：時代を超えた魅力

『COME ALONG』は、販売促進用アルバムという意外な誕生秘話から、多くのリスナーの支持を得て、幾度となくリリースされてきた、山下達郎の代表作の一つです。その音楽性と、リリースの歴史は、まさに音楽史に残る伝説と言えるでしょう。単なるコンピレーションアルバムとしてだけでなく、時代背景、制作過程、そして音楽的魅力を理解することで、『COME ALONG』の真価を改めて知ることができるでしょう。

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