COPI

COPI（コートタンパク質複合体I）とは

COPIは、細胞内のタンパク質輸送に関わるコートタンパク質複合体の一つです。特に、ゴルジ体シス面から粗面小胞体への逆行性輸送、およびゴルジ体内の区画間輸送を担っています。この輸送は、COPIIタンパク質による順行性輸送とは対照的に、細胞内での物質の流れを調整する上で重要な役割を果たしています。

COPIは7つの異なるサブユニット（α、β、β'、γ、δ、ε、ζ）から構成される巨大なタンパク質複合体です。これらのサブユニットが協調して機能することで、輸送されるタンパク質の選別、小胞の形成、そして標的膜への融合といった複雑なプロセスを可能にします。

COPIの機能

1. 被覆タンパク質としての役割:
COPIは、膜輸送に関与するADPリボシル化因子（ARF）依存性のタンパク質です。ARFは、細胞内膜における小胞形成を制御するGTPアーゼであり、COPIはその活動に不可欠なアダプタータンパク質として機能します。特に、シスゴルジから小胞体への逆行性輸送において、その役割が最初に同定されました。

2. アダプターとしての機能:
COPIの主要な機能の一つは、輸送されるタンパク質（積み荷）を選別し、小胞に取り込むことです。特に、KKXXまたはKXKXXという選別モチーフを持つタンパク質はCOPIと相互作用し、小胞体への輸送が促されます。近年では、ARFも積み荷の選別に関与している可能性が示唆されています。

出芽の過程

1. ARFの役割:
ARFは、膜輸送に関わるGTPアーゼであり、GTP結合型とGDP結合型の二つの状態を切り替えるサイクルを持っています。GTP結合型では、ARFは膜に結合し、小胞形成を促進します。この切り替えは、グアニンヌクレオチド交換因子（GEF）とGTPアーゼ活性化タンパク質（GAP）によって厳密に制御されています。

2. 内腔タンパク質の輸送:
ゴルジ体内腔から小胞体へ輸送されるべきタンパク質は、KDELというシグナルペプチドを持っています。この配列は、小胞体膜に存在するKDEL受容体（酵母ではERD2P、哺乳類ではKDELR）によって認識されます。受容体はその後、ARF-GEFに結合し、ARFの活性化を引き起こします。活性化されたARFはシスゴルジ膜に結合し、COPI複合体の形成を促します。

3. 膜タンパク質の輸送:
小胞体膜に存在するタンパク質は、細胞質側の尾部にKKXXまたはKXKXXという選別シグナルを持っています。この配列は、COPIのサブユニットであるα-COPとβ'-COPと相互作用します。アダプタータンパク質、積み荷、ARFの結合順序はまだ完全には解明されていませんが、これらがすべて揃うことで成熟した輸送体の形成が可能になります。

4. 小胞の形成と輸送:
上記のような相互作用を経て、膜の変形と小胞の出芽が起こります。形成された小胞は、供与膜（シスゴルジ）から離れて小胞体へと移動し、そこで受容膜と融合して内容物を放出します。

COPIの構造

小胞の表面では、COPI分子は対称的な三量体（トライアド）を形成します。このトライアド構造は湾曲しており、ARF1分子と積み荷結合部位は膜に近接して位置しています。β′-COPとα-COPサブユニットは、γζβδ-COPサブ複合体の上にアーチ状に配置され、N末端ドメインにあるK(X)KXXモチーフ結合部位は膜に対して最適な位置にあります。COPIは、COPIIやクラスリン小胞のように籠状や格子状の構造を形成するのではなく、γζβδ-COPサブ複合体を介して互いに連結し、集合体を形成します。トライアドはさまざまな様式で連結し、４つの異なるタイプの小胞を形成すると考えられています。

関連項目

COPII
クラスリン
* Exomer

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