CRS (航空)

CRS（コンピュータ予約システム）とは

CRS（Computer Reservations System）は、航空機の座席予約をはじめとする旅行関連サービスの予約をコンピュータで行うシステムです。もともとは航空会社が自社の予約業務を効率化するために開発・運用していましたが、その利便性から旅行代理店にも利用が拡大しました。

当初は集中型システムとして構築されましたが、技術の進歩とともに分散型システムへと発展。現在では、航空券の予約だけでなく、ホテル、レンタカー、鉄道、船舶などの幅広い予約をエンドユーザー自身が行えるようになり、これらのシステムはGDS（Global Distribution System）として知られています。

CRSの歴史

1960年代、航空業界では予約業務が煩雑化し、非効率性が課題となっていました。その解決策として、1963年にアメリカン航空とIBMが共同で開発したSABRE（Semi-Automated Business Research Environment）が導入されました。これは、世界初のコンピュータ予約システムであり、業界に大きな変革をもたらしました。

その後、1971年にはユナイテッド航空がApollo（後にガリレオに統合）を、トランス・ワールド航空がPars（後にワールドスパンに統合）を開発し、CRSの競争が始まりました。1976年には旅行代理店への開放、1978年のアメリカ航空規制緩和（運賃自由化）をきっかけに、CRSは広く普及しました。

しかし、CRSを所有する航空会社が自社便を優先的に表示するといった不公正な行為が問題となり、1984年に米国運輸省（DOT）は、CRSを航空会社から分離・独立させるCRS規制法を施行しました（2003年に撤廃）。分離されたCRSは、航空会社からの予約手数料と旅行代理店からの端末使用料を収入源としましたが、競争激化により端末使用料が下がり、予約手数料が上昇する傾向が見られました。

2001年の9.11テロ以降、高い予約手数料を嫌った航空会社は、CRSを通さずにインターネットでの直接販売に注力するようになりました。これに対応するため、各CRSは多角化を進め、旅行全般を取り扱うGDSへと進化していきました。

CRSの主な機能

CRS/GDSは、以下の様な機能を提供しています。

フライトスケジュール情報の取得
空席状況の確認
運賃の照会
座席予約
航空券の発券
航空券の払い戻し・キャンセル処理

主要なCRS（GDS）

現在、世界で利用されている主なCRS（GDS）は以下の通りです。

三大CRS

アマデウス (CRS)：アマデウスITグループが運営する世界最大級のGDSです。
SABRE：アメリカン航空が開発したシステムをルーツとする、世界的に利用されているGDSです。
トラベルポート：ガリレオとワールドスパンを傘下に持つGDSです。

リージョナル（Regional）CRS

INFINI：日本国内で広く利用されているGDSです。
able：ANA（全日本空輸）系のCRSで、主にANA、AIRDO、ソラシドエア、スターフライヤーが利用しています。
AXESS：JAL（日本航空）系のCRSでしたが、2021年3月末をもって営業を終了しました。
Jupiter：スカイマークが自社開発したCRSです。
アバカス：アジア太平洋地域を中心に利用されているGDSです。
KIU：様々な航空会社で利用されているCRS&GDSです。
トラベルスカイ：中国市場向けのGDSです。

CRS/GDSに関連する用語

横断的販売網：複数のサービスを統合的に販売するシステムで、GDSがその代表例です。
PNR (Passenger Name Record)：旅程の予約記録のことで、予約番号とも呼ばれます。
電子航空券：従来の紙の航空券に代わる電子的な航空券です。
SITA：航空業界の情報通信技術ソリューションを提供する企業です。
IATA：国際航空運送協会の略称です。
ICAO：国際民間航空機関の略称です。

まとめ

CRSは、航空予約システムとして誕生し、その利便性から旅行業界全体へと普及しました。GDSへと進化したことで、航空券だけでなく、ホテルやレンタカーなど、旅行に関するあらゆる予約を可能にする重要なインフラとなっています。現在も技術革新とともに、常に進化し続けています。

参考文献：株式会社ANA総合研究所編著『航空産業入門』東洋経済新報社、2008年

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