Cobalt Qube

Cobalt Qube（コバルト・キューブ）は、かつて存在したCobalt Networks社（後にサン・マイクロシステムズに買収される）によって開発された、Webサーバー用途に特化したコンパクトなサーバーアプライアンス製品群です。これらの製品は1998年から2002年の間に製造・販売されました。

製品のコンセプトと技術

Cobalt Qubeシリーズの最大の特徴は、サーバーとしての機能を箱型の小型筐体に集約し、専門知識があまりないユーザーでも容易に設置・管理できるように設計されていた点にあります。オペレーティングシステムには、広く普及していたLinuxディストリビューションであるRed Hat Linuxを基盤とした独自の派生版が採用されました。特に評価されたのは、ウェブブラウザ経由で直感的にサーバー設定や運用状況の確認が行える、独自のグラフィカルユーザーインターフェース（GUI）を提供していたことです。これにより、コマンドライン操作に不慣れなユーザーでも、メールアカウントの設定やウェブサイトの公開などを比較的簡単に行うことが可能でした。

初期のモデルでは、MIPSアーキテクチャに基づくRM5230またはRM5231マイクロプロセッサを搭載していましたが、後継モデルではより一般的なx86アーキテクチャのAMD K6-2プロセッサが採用され、処理能力が向上しました。標準のOS以外にも、技術者コミュニティの活動により、UNIX系OSであるNetBSDがCobalt Qubeおよび同社のデータセンター向け製品ラインであるCobalt RaQ向けに移植され、利用されていました。

主なモデル

Cobalt Qube製品ラインは、いくつかの世代と派生モデルが存在します。

Qube 2700: 1998年に発表されたシリーズ最初の製品です。Cobalt Networksの創業初期の主力製品として、特徴的なコバルトブルーの筐体と前面の緑色のLEDパネルデザインが採用されました。製品名の「2700」はバージョンや世代を示すものではなく、元素コバルトの原子番号である「27」に由来しています。このモデルはRM5230プロセッサを搭載していました。

Qube 2: Qube 2700の後継として登場し、2000年に発売されました。開発段階ではQube 2800という仮称で呼ばれていましたが、製品版ではQube 2という名称になりました。「2800」は製品型番ではなくシステムタイプを示す識別子として使われました。RM5231プロセッサを搭載しています。

OEMモデル: Qube 2は他社へのOEM供給も積極的に行われました。例えば、Gateway社からはGateway Micro Serverという名称で販売されましたが、こちらは元のコバルトブルーではなく黒色のケースデザインでした。日本国内では、NTTドコモが自社の携帯電話サービス関連システム向けにカスタマイズしたQubeをMM-QUBEとして展開していました。

Qube 3: シリーズ最終製品として2002年に発表されました。このモデルでは、より高性能なAMD K6-2プロセッサ（300MHzまたは450MHz版）を搭載し、処理能力が強化されました。

Cobalt Networksは第4世代のQubeの開発も行っていましたが、製品として市場に投入されることはありませんでした。しかし、同社のサーバーアプライアンス事業は、より大規模なデータセンター向けのCobalt RaQシリーズへと引き継がれていきました。

Cobalt Qubeシリーズは、手軽に導入できるウェブサーバーアプライアンスとして、特に中小規模の事業所やSOHOユーザーから一定の支持を得ました。そのコンセプトは、その後の様々なサーバーアプライアンス製品にも影響を与えたと言えます。

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