CubeSat

CubeSat：宇宙への手軽なアクセス

CubeSatは、1辺10cmの立方体を基本単位とする超小型人工衛星です。そのコンパクトなサイズと標準化された設計により、従来の人工衛星に比べて大幅に低コストで開発・打ち上げが可能となっています。そのため、予算や技術的な制約のある大学研究室や企業、民間団体、教育機関など、幅広い組織が宇宙開発に参加できるプラットフォームとして注目されています。

CubeSatの歴史と規格

CubeSatの開発は1999年、カリフォルニア州立工科大学とスタンフォード大学によって開始されました。同大学が公開した設計標準に基づき、世界初のCubeSatは2003年6月に軌道投入されました。その後、CubeSatは急速に普及し、多様なミッションに利用されるようになりました。

CubeSatのサイズは、基本単位である1U（10cm×10cm×10cm）を基準に、2U、3U、6Uなど整数倍のサイズが定義されています。重量もサイズに応じて制限されており、1Uで1.33kg以下、6Uで7.98kg以下と規定されています。また、W6Uなど、異なる寸法の規格も存在します。

打ち上げと放出機構

CubeSatは、主にピギーバック方式でロケットに搭載され、軌道に投入されます。初期にはP-PODという共通の放出機構が広く利用されていましたが、現在ではP-POD Mk IIIをはじめ、ISIPOD、XPOD、NanoRacks社の放出機構など、様々な機構が開発・利用されています。日本のH-IIAロケットではJ-PODが使用されています。

国際宇宙ステーション（ISS）を利用した打ち上げ方法もあります。無人宇宙補給機でISSに運ばれ、きぼうのロボットアームと小型衛星放出機構（J-SSOD）によって軌道に放出される方法です。この方法は、複数機のCubeSatを一度に放出できる利点があります。

コストと普及

CubeSatの打ち上げ費用は、従来の人工衛星に比べて非常に安価です。2004年時点では、1UサイズのCubeSat1個あたり、65,000～80,000米ドル程度と推定されています。この低コストが、世界規模でのCubeSat開発・打ち上げの普及を促進している要因の一つです。

近年では、年間数百機規模でCubeSatが打ち上げられており、2024年初頭には累計打ち上げ数2000機を超えています。また、CubeSatのパーツやキットを販売する企業も増加しており、開発の敷居がさらに低くなっています。

多様化する仕様と目的

CubeSatの普及とともに、その仕様や目的も多様化しています。姿勢制御システムを搭載したもの、高データレート通信を可能とするもの、環境負荷軽減のための工夫を凝らしたもの、推進系を搭載して軌道制御を行うものなど、様々なCubeSatが開発されています。

近年では、多数のCubeSatを低軌道上に展開し、地球観測を行う商業用地球観測ネットワークの構築や、深宇宙探査への活用も注目されています。2018年にはNASAが火星探査機としてCubeSatを打ち上げ、2022年にはJAXAが月面着陸実証機としてCubeSatを打ち上げました。また、小惑星の軌道変更実験ミッションDARTでは、CubeSatが小惑星の衝突の様子を撮影する役割を果たしました。

その他の小型衛星規格

CubeSat以外にも、CanSatやPocketQubeといった、小型衛星に関する規格が存在します。CanSatは、宇宙打ち上げを目的とせず、教育目的で衛星開発に必要な要素を学習するために用いられる模擬人工衛星です。PocketQubeはCubeSatよりもさらに小型で、5cm角を基本単位とする規格です。

まとめ

CubeSatは、低コスト、容易な開発、多様な用途といった利点を持ち、宇宙開発の新たな可能性を切り開いています。今後ますますその普及と技術革新が期待されます。

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